第112回「美味しい塩であふれる売り場」【週刊ウンチク】

第112回(2003.4.24)「美味しい塩であふれる売り場」
提供:おいしい店ドットコム 松本信之さん


揚げ浜塩田

金沢・近江町 おいしい店の松本信之さんが、
話題の「天然塩」について化学塩、自然海塩(天日塩)、岩塩、再生塩を比較して紹介。ミネラル含有について、塩味の感じ方、美味しい塩を見分ける味見方法などを、食のプロが伝授します。

「美味しい塩」であふれる売り場

天然塩と言っても様々な種類が。

いま百貨店や高級スーパーの売り場には、10種類以上は当たり前、中には40~50種類もの塩をそろえる店が多数あります。「たくさんの贅沢は出来ないけどこれ位はリッチに」と売れ行きも好調で、特に海水を天日で干した物や、岩塩などからつくられる「自然塩」を大きく打ち出した商品が人気の中心です。
一般消費者の動向が外食産業も動かし、高級料亭を手始めに外食チェーンでもファミリーレストランの「デニーズ」や「カーサ」、居酒屋「つぼ八」などでテーブル上の塩を「伯方の塩」、「赤穂の天塩」などの天然塩(準天然塩も含む)に切り換えて、好評を博しています。

おいしい店の実店舗でも、自然海塩を中心に取り揃えています。

■生産性を極めた化学塩(日本の塩作り)

珠洲の揚げ浜塩田

海水から塩を作るのには、外国では塩田に海水を張っておけば塩の結晶ができますが、多雨多湿の日本では太陽熱や風力だけに頼ることは困難ため約8000年前からさまざまな工夫がなされてきました。

「揚げ浜式塩田」(現在、石川県珠洲市仁江海岸 で無形文化財として残っています。)が確立するのは中世のころで、砂地に汲み上げた海水を繰り返し撒き、砂に塩分が充分についたところで濾過装置に入れ、その上に海水をかけて洗って濃い塩水(かん水)を作り、平釜にかけて煮詰め(煎ごう)、塩の結晶を取りました。
この揚げ浜式は、海水を汲み上げて浜に撒く"潮汲み"が大変な重労で、森鴎外の「山椒太夫」では過酷な労働のため姉の安寿が体を痛め、盲目の身になってしまいました。

中世後半からは、潮汲みの労働の軽減のため潮の干満差を利用して海水を塩田に引き込む「入り浜式塩田」が登場します。

昭和20年代に入ると、傾斜をつけた流下盤と粗朶や竹を吊るした枝条架で塩分を濃縮、乾燥させる「流下式枝条架式塩田」が登場し、従来の10分の1の労働力で3倍の生産量を上げるようになり、理想的な製塩法が完成しました。しかし実際には、この流下式は昭和20年代後半から昭和46年までのわずかな期間しか使用されませんでした。

「イオン交換膜式」という化学的製塩法に切り替わったのです。
この「イオン交換膜式」とは、海水を濃縮する従来の製塩法とは大きく異なり、塩化ナトリウムを電気的に取り出す方法です。この方法では、99%以上という極めて純度の高い塩化ナトリウムが安価に取れるのですが、本来の塩が持っていた天然のニガリ分(マグネシウム、カルシウム、カリウム)を排除することになってしまいました。
つまり専売公社の塩は経済的理由によってのみ生み出されたもので、コスト削減と効率アップを追求してたどりついた物であり、その結果食塩からは人間に不可欠なミネラルが残らずそぎおとされてしまったのです。

果たして、この究極の化学塩が美味しいかどうか、それはあなた自身で判断すべきです。最近、巷にあふれる塩はこのアンチテーゼとして理解しています。


自然塩とはなにか。(大きく分けて4種類)
天日海塩
海水の濃縮をある程度まで天日で行い、その後で火を使って釜焚きして結晶させた塩です。
完全天日海塩
海水の濃縮から最終の仕上がりまでに火を使わずに、天日(太陽と風)の力だけで乾燥させたもの。
岩塩
海だったところが地殻変動などの理由で、地下に埋もれてしまったり、山になってしまったりして、何千年もかけて徐々に乾燥してできた岩塩層の塩です。
これは時間がかかっているだけにより自然塩という感じがしますが、結晶過程でそれぞれの成分が分離しているので、もう一度再結晶させて作ります。つまり海水が岩塩になるまでには気の遠くなるような長い時間が必要なため、海水に含まれていた微量ミネラルは、ほとんどがまわりの土壌に吸収され失われてしまいます。そのため、岩塩は自然塩とはいっても自然海塩とは成分が異なるのです。たとえば、岩塩にはカルシウムや鉄などはほとんど含まれていませんし、ヨードもごく微量です。
ちなみに欧米では日本とは逆に海塩の方がプレミアムで袋に大書して強調されています。
再製塩
赤穂の天塩・伯方の塩などの再製塩で、忠臣蔵の地赤穂で作っていたわけではなく、外国から輸入した天日海塩ににがりを加えて再結晶させた再生自然塩です。
塩は加工品なので加工地の名前が付けられても構わないので、日本の地の名がつくのです。
ただし外国からの天日塩は1年から2年もかけて採取するので、ミネラル分はほとんど飛んでしまって精製塩と変らぬ塩化ナトリウムの純度の高さとなっているため日本でにがりを加えて再生します。
当然、自然の海に含まれるミネラルバランスは崩れてしまっています。高純度の塩化ナトリウム塩に市販のカルシウム剤やニガリをそのまま加えても、それらのミネラル類は、体に吸収されにくいのです。

■天日塩はミネラルの宝庫

自然海塩には海水に含まれているミネラルがすべて含まれています。
よく「ミネラルたっぷりの塩」とのキャッチフレーズを見聞きしますが、正確には塩化ナトリウムも立派なミネラル(無機物)でです。これが海水の8割程度、残りの2割が塩化マグネシウム・塩化カリウム・硫酸マグネシウムなどで、いわいる「塩のミネラル分」といえばこれらの塩化ナトリウム以外の成分を挿します。
このミネラルの中には、ごく微量でありながらそれが欠けると人の体に非常な障害をもたらすヨード、ストロンチウム、セレンなどの微量元素も含まれています。ミネラルのなかにはまだその働きが解明されていないものも多いのですが、海水に含まれる92種類のミネラルのうち、少なくとも24種類については生命の維持に必要不可欠な元素だということが確認されています。


「塊の岩塩をなめても塩辛くないョ」という意見もあります。

塩化ナトリウムの純度の高い岩塩ですが、これは成分のせいではなく結晶の状態の違いによります。湿気で固まった砂糖の塊や角砂糖を口に含めば甘くて仕方がないが、氷砂糖なら大丈夫、美味しい。
つまり細かい粒はさっと溶けるため、味は口にすぐ広がるが、均一に固まった結晶の塊は溶けるのが遅いため味を感じにくい。岩塩もこれと同じでミネラル分が多いわけではないのです。


では、塩の味見をする時はどうしたらいいか。

粒子の大きさを考慮にいれるのです。粒子が大きいと溶ける速度が遅いため、それだけでまろやかに 感じ、 逆に粒子が細かいと早く溶けるため、味がきつく感じられます。 また結晶構造や、湿った塩ほど直接なめた時の感じは塩辛くなく、甘い印象を受けるなど、水分の含み具合でも、印象が変わります。 これらを解消するには、最初の印象にとらわれず、 塩味を口の中全体に広げ、舌への刺激が完全になくなるまで 味わうことです。3分はかかります。

平成9年(1997)、塩専売法が廃止され、国産塩の製造販売が自由化されました。
これにより日本に出回る塩は一気にバラエティが豊かになり、世界一ともいえる選択肢を持つ国となりました。
一般に海の魚には海の塩を肉類には岩塩といわれますが、前述のように塩の味は原料や結晶法の違いだけでなく、結晶の形や乾燥度合いなどによって味の印象が変わります。また使い方によって味も変わってきます。 

自分自身で味を見て、使ってみて、選ばれることが重要だと思います。
 
 
<ミニリンク集>
奧能登天然塩のWeb通販…金沢・ヤマト醤油


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