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2005年07月27日
第38回「布の色落ちについて」【週刊ウンチク】
第38回(2001.11.15)「布の色落ちについて」
提供:出口織ネーム 出口勉さん



厚化粧をしていないスッピンにもどきっとしますが、すっかり落ちてしまった布の精彩のなさにも、かなりガックリするものです。ましてや一緒にお供した水槽のお仲間にシッカリと色がかかっていようものなら、その原因となった彼女の洗濯表示の記号を目を皿のようにして見直すことは必定ですね。
まだ、このように現象がはっきりわかる時は、誰が悪いのか(ものが悪いのか、使い方が悪いのか)、怒りの矛先がはっきりするのですが、何回も洗濯していると、いつのまにか色が抜けたなんて事の方が圧倒的に多いはずなんです。
このような時、誰もがそんなものなのかと思って、そのままの場合が多いんではないでしょうか。実はそのあたりに、実に微妙なニュアンスが感じられるんです。それでいいのかなあ、って。
布の材料は沢山あります。毛、絹、綿、麻、ガラス、金属、鉱物、炭素、合繊、化学繊維、近頃ではコンニャクの糸とか、とうもろこしの糸などなど、そうしょうと思うなら何でもそう出来るご時世なんです。そんな科学の発達した時代にナンデ色が落ちるのでしょうか。

そもそも着色とは、ものを構成する架橋構造の隙間に色の材料が挟まっている状態をさすわけです。たとえて言えば、バスの座席に座っている人は少し揺れた位では、どうって事は無いですが、立ってる人、特に足腰の強くない人は、ひどい時には倒れたりする事があります。この何かに刺激を受けて所定の場所から脱落する事が色落ちなのです。
車に乗るときはシートベルトをしますが、それに相応するのが色止めの技術なんです。日本は結構、この技術のレベルが高いのですよ。
それでは、どんな刺激によって色は退色するのか考えてみましょう。

★ 洗濯するにあたっての退色
洗剤には実に多くの種類のものがあります。もっとも最近は洗剤を使わないという画期的な全自動洗濯機が話題になりましたが、それって、水道水に含まれる滅菌目的の塩素を電気分解して次亜塩素酸を発生させ、その酸化力で汚れを分解するものなんです。(鉱物系や泥などの無機系の汚れは落ちないので、あくまでも汗ばんだ有機系の軽い汚れを落とす仕組みなんですよ。環境にやさしく、画期的なことですね。)
見方を変えて、色も汚れだとすると、それを何とか落とそうというのです。過酷な話ですねえ。
化学染料の場合だと、中性洗剤であれば、おおむね問題ありませんが漂白剤入りだと問題の起きる場合があります。染料によっては、漂白に対して明らかに強弱の差があるのです。
実際にあった話ですが、あるメーカーでレイヨンの色落ちクレームが発生しました。そのメーカーは染工場に対して色が落ちないように「堅牢染め」で再度発注しましたが、もっとひどい色落ちが再び発生しました。
それはなぜかと言いますと、業界用語でいう「堅牢染め」とはレイヨンの場合、反応染料を指します。この染料は漂白以外の堅牢度(下記参照)は極めて良好なのですが、漂白のみ最悪なのです。知らないことは恐ろしい!
★「耐光性」・・・光があたって退色してしまう。
これは光に対する堅牢度、主に紫外線に対するものです。化学の世界では随分と研究を重ねていますが、なかなか大変のようです。今のところ染料では難しいようで、無機の顔料がベストですが、これはこれで、発色性があまりよくなく、大量生産の必要性などから、色数が少ないという欠点があります。
★「昇華堅牢」・・・熱によって色がとれてしまう。
主に熱によって色が変化したり、抜けた色が他のものに移染.汚染することです。分散染料によって染めたポリエステルの布をスチームアイロンで140度以上の温度で長時間アイロンがけすると起きます。その性質を利用した染色方法(プリント)があるくらいです。最近は改質されたポリエステル糸で、昇華堅牢度の良好なカチオン染料のものが増えていますがまだまだ少ないので、ご注意あそばせ。
その他、ドライ、摩擦、耐薬品性(酸、アルカリ、有機溶剤)などあります。
それからもう一つ、化学的でない染色方法による色落ちがあります。自然素材、天然の材料との関わり、感性を大事にする世界です。これはちょいとモノサシの違うお話ですね。

でも、世の中値ごろ感というものが幅を利かせておりまして、「これ位のものにはこのレベルでいいのだ」という考えが残念ながら大勢を占めているんですよ。もう少しレベルを上げればいいのになあと思っても、それでいいのだと云われればそれまでなのです。
コストが圧迫されても、ベストな材料で、永い時の変化に飽きずにお付き合いのできるものをこしらえたい。そう思って商品を創り始めたのですが、色落ち一つの問題にしても、なかなか解決しにくいことがあります。
それは、複合素材(*)を用いる商品のとき、使われ方によって(このことで妥協したくないのです)、どの材料かに欠点が目立つことがあることです。私は、顔料、カチオン染料をベースにしてその他の染料(色止め強化したもの)を組み込んだ素材の選択をしています。
モニターや堅牢度テストでの確認をしながら進めていると、随分時間がかかります。妥協をしないってこういうことなんだと、今、つくづく遠い先を見やりながら歩みを進めています。



(*註)「複合素材」とは一本の糸が複数の素材で構成される場合と
一本一本が異なる素材で織り上げた場合、或いは作られた商品の
パーツ毎に素材が異なる場合などがあります。各堅ろう度すべてを
クリアーしようとすると、時間とコストの戦いが始まるのです。
投稿者 お店ばたけ事務局 : 2005年07月27日 09:07