第89回「金沢の冬のご馳走『かぶら寿し』」【週刊ウンチク】

第89回(2002.11.7)「金沢の冬のご馳走『かぶら寿し』」
提供:直源醤油 直江潤一郎さん


直源醤油 直江潤一郎さん

今週は、古くは北前船で栄えた金沢・大野町の、醤油の老舗
直源醤油の直江潤一郎さんがお送りします。
11月になり、年賀状の準備を始めると、お正月も間近!
今回は金沢の年末・お正月には欠かせない、かぶら寿しのおはなしです。

金沢の味、かぶら寿司

  金沢の冬のご馳走「かぶら寿し」

琵琶湖周辺に伝わる「鮒(ふな)ずし」をはじめ、全国各地には地元に根ざした「なれずし」(魚介類を主原料としご飯を用いて乳酸発酵させた保存食品)がいろいろありますが、この金沢にも「なれずし」の一種とされる御存知「かぶら寿し」があります。
「かぶら寿し」は輪切りにした「青かぶら」に鰤(ぶり)の切り身を挟み、糀で漬け込んだものです。

この「かぶら寿し」はもともと加賀藩後期に「宮の腰(金石)の漁師が豊漁と安全を祈って正月の儀式(起舟)のご馳走として出した」とか「前田の殿様が深谷温泉に湯治にこられた時の料理に出された」とか、いろんな言い伝えがあるようですが、記録としては「金沢市史」(風俗編)に宝暦7年(1757)10代藩主重教の頃、中流家庭の年賀の客をもてなす料理として「なまこ・このわた・かぶら鮓(すし)」とあり、また、加賀藩の儒学者金子有斐が書き残した「鶴村日記」の文政9年(1826)1月3日に「晴天○魚屋小兵衛方より鰤のすし来る風味よろし」、1月5日「雨天○鶴来町屋よりにしんのすし(大根すし)栗もち小豆等来る」と記述がある。
当時は魚屋が漬け込み正月用の珍味としてお得意様へ贈っていたが、かぶら寿しは高い身分のものが食し、一般の人たちは大根寿しを食べていたと考えられる。
「北陸に今も残る古代鮓(阿部佐武郎薯)」より抜粋

現在でも各家庭では時期になると盛んに「かぶら寿し」を漬けて、互いに味自慢をしています。
そこに家の味があります。
ほんとお店・家庭でさまざまな味があります。同じ方がつくったものでも食べるタイミングで微妙に味が違ったり、生ものだなって感じることもしばしば。もちろん現代は身分の高い低いがないので何でも気軽に食べれるようになりました。

が、何といってもかぶら寿しは「鰤(ぶり)」が挟んであるのが「百万石」という感じでゴージャスです。また大根寿しの「鰊(にしん)」独特の旨みと大根の歯ごたえのある食感もいいですね。

でも「かぶら寿し」を初めて召し上がる人はちょっと引いてしまうのではないかと余計な心配をします。
「糀を水で流して食べた」とか「腐っているのではないか」とか「ハムが挟んであった」とかいろんな珍話を聞くのもおもしろいですが、この「かぶら寿し」には金沢の食文化の奥の深さと贅沢の真髄があると思います。これをなくして金沢のお正月は語れません。


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