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2008年03月14日

「石川発!お店探訪記」 輪島屋本店(輪島市)

(財)石川県産業創出支援機構「石川発!お店探訪記」-金沢・加賀・能登 頑張るお店-では、石川県内の実店舗・ショップを訪問し、取扱商品の特徴・売れ筋、店づくりや店舗展開・経営方針、顧客サービスや今後の課題などを取材して、頑張っているお店の魅力を紹介していきます。

-金沢・加賀・能登 頑張るお店- 輪島屋本店
輪島屋本店

平成19年3月25日に発生した能登半島地震で、被害の大きかった塗師屋の一つが輪島屋本店である。生活様式の欧米化で日本の伝統産品が日常生活から消えていく中、高級品としてバブル崩壊の影響をもろに受けた輪島産地にとって、地震はダブルパンチとなった。しかしながら、中室勝郎社長は「地震を言い訳にした商いや復興策は誤りだ」と苦言を呈す。
輪島塗が誕生した由来を検証し、生い立ちに則った復興策に自力で取り組む胸の内を伺った。


●産地の生い立ちを再認識せよ
テーブルコーディネイト イメージ輪島塗の原点は何か。それは品質である。日本人はブランド好きだが、ブランドは品質を中心とした文化であり、輪島塗は品質の良さを基盤にし、産地内で品質向上の競争をしてきた歴史を有する。
「輪島産地は価格競争ではなく品質競争で顧客の信頼を得てきた産地である。その生い立ちに目を向けて取り組めば、そこから自ずと復興の知恵がたくさん生まれてきます。
もともと輪島の塗師屋は全国のお客さんを一軒一軒訪ね歩き、生産者と消費者が直接結ばれた販売システムを構築し、お客様の声を聞きながらモノづくりをしてきました。そこで聞こえてくる声は品質であり、それが産地を作り上げてきたのです。したがって、震災からの復興にあたって、その取り組みを再度ゼロからやり直すことこそが、正しい復興策です。」と力説する。
品質は文化を生み、文化はまた品質をさらに高めていく。物が使われる文化環境を整備し、提供しながらやっていくことが真の振興策というわけだ。


●品質を徹底的に追求する
屠蘇器と木盃「我々の産業を、モノづくりを、常に科学することが大切。業界の目が外へ、販売へ向いていたものを内に向けてみる。すなわち品質に目を向けていく。どう売っていくかではなく、どういう品質のものをどう作っていくか、高い品質競争をしていた、過去の輪島の先人達と競争してみようと思っています。
モノづくりは三つの要素で成り立っています。まずは材料。いい材料をしっかり確保していくことは、古今東西普遍です。二つ目は技術。三つ目は意匠・デザインです。これらが極められることで品質が確保されるわけですが、品質は文化を伴わないと本物とは言えません。モノづくりの三要素に文化力を結びつければ、何も心配は要らない。」と持論を披瀝。


●国産漆へのこだわり
中室勝郎社長材料については、中国の漆がないと成り立たないのが現状である。中国産も日本産も丈夫さでは変わりないが、仕上げの上塗りで日本産の漆を使うと随分と優れたものになる。ただ、これは感性が評価する世界のため、評価しにくいものではあるが、肌触りのやさしさ、やわらかさ、漆黒のツヤといった五感に訴えるものは日本産が優れている。
しかしながら、現実問題として国内産の漆はほとんど採れなくなってきている。そのため同社では、岩手県二戸市に国内最大の漆の森を所有し、純正な日本産漆の自家栽培から純粋精製までを行い、熟練した漆掻き職人と直接契約し、採集方法も指定して賄っている。
明治11年の工業統計では、国内で700トンの漆が採れていたが、現在(平成19年)では1トン足らず。そのうち、岩手県の二戸市が8割に当たる800㎏を生産している。
国内産の漆は希少で価格が高く、中国産に比べて10倍近い価格に跳ね上がる。その漆を使えば、非常にいいものはできるが、それを価格に転嫁した場合、その価値が正しく評価されるかとなると難しい。それを分かってもらうためのデザインや技が必要になってくる。
「伝統産業には最高の技を有する頂点が不可欠。その頂点を輪島が担っていた事実を再認識し、輪島はそこを目指さなければいけない。」と自らに言い聞かせるように語る。


●与えられた使命は日本最高の漆器づくり
輪島塗のカップや湯飲み「この世の中で最も優れたものを作ること、日本の歴史の中で一番良いものを作りたい。現代の人たちと競うのではなく、歴史上の優れたものと競い合いたい。私は中世の漆器の技が歴史上最高のものだと思います。当時、来航した外国人が日本で目にする庶民の生活の器は全て漆器だった。日本人の暮らしが漆器なしでは考えられなかった時代で、漆器が何故JAPANと呼ばれているか、その由来はここにあるのです。このことが私の心を最も動かしていることで、日本人の魂のルーツを探る器を作りたい、遺したいという熱い思いがみなぎっています。」と力を込める。
中世のいい黒は下地が黒く、最後の上塗りは半透明の漆を塗っている。下に黒が見えるから黒がより一層深い。この塗りをこなすには高度な技術が求められる。その大前提として、いい材料が不可欠なことから、自社で栽培し精製した漆を用いて、中世の黒を超えた黒を完成の域にまで到達させることができたという。
そうしたモノづくりを通して技と材料が整い、初めて意匠が生きてくる。「意匠は思想がないと成立しない」と断言する中室氏は、意匠の専門家を自前で育成すべく、日本で最初の漆器専門のデザイン事務所を24年前に設立し、材料と技と意匠を結集した史上最高の漆器づくりに邁進してきている。


●地震の禍を転じて福(新工場)と成す
「震災は禍ではあるが、我が社にとっては福だったと捉えています。なぜなら我々のモノづくりに禍をもたらした一方で、これまで古い蔵を建て直そうにも資金のことを考えると思い切れずにいた私に、思い切りと勇気を与えてくれたからです。」と、禍転じて福と成す。
漆は空気中の酸素を吸って乾くため、温度と湿度の管理が非常に重要である。従来、温度や湿度が安定した土蔵の中に漆を乾かすための塗師風呂を設けてきたが、土蔵よりもさらにいいのは木で、工場全体を木の塗師風呂にすることを考案する。天井も壁も床も木で囲んだ空間を作り、断熱材を使い、空調を完備した最適な環境を整備し、従来にない斬新な発想による木の蔵が間もなく完成する。
「まさに森の中で作業しているような環境で漆と向き合っていきたい。これも地震があったおかげで決断することができた。」と完成が待ち遠しい様子。


●次代へ向けての助走
漆塗りのカップでコーヒーが飲める喫茶店「花塗り」これからの後継者育成を考えた時、能登に若い人がいない。漆を理解した上で、それを広めて販売できる人材を育成しなければならない。そのために、5年先を見据えて、人を集められる場所、すなわち東京に拠点を設け、何をしなければいけないか、そこからスタートしている。「かつて輪島塗は日本人の魂の器と呼ばれていましたが、今はそう言われなくなりました。その理由の一つはそれに値する器を作っていないからです。食器を手に持って口に付けるのは日本人だけです。その理由は、食器が全て漆器であり、漆器は魂の器と言われ、魂が込められていたからです。そういう器をもう一度作らなければいけない。本当に手に持ちたい器、口に付けたい器を作らなければいけない。それが当社の目指すモノづくりです」と、志高く最高の漆器づくりに邁進する。


■インタビューを終えて・・・
「輪島塗が目指すところは生活芸術品でなければならない。漆器は工房で完成するのではなく、長年使い込んで初めて完成の域に達します。つまり、完成を使い手に委ねる仕事です」との中室氏の言葉に、輪島塗の奥深さ、素晴らしさを痛感し、感動を覚えた。

(平成19年12月取材)

輪島屋本店 外観商 号 株式会社 輪島屋本店
所在地    輪島市河井町24-11
創 業    文化10年(1813年)
電話番号 (0768)22-0521
URL http://www.wajimayazenni.co.jp
営業時間 8:30~17:00
定休日 年中無休


投稿者 お店ばたけ事務局 : 2008年03月14日 13:18

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