「石川発!お店探訪記」 横井商店 (鳳珠郡能登町)おばあちゃんの手作りの味を今に伝える松波飴

(財)石川県産業創出支援機構「石川発!お店探訪記」金沢・加賀・能登 頑張るお店 では、石川県内の実店舗・ショップを訪問し、取扱商品の特徴・売れ筋、店づくりや店舗展開・経営方針、顧客サービスや今後の課題などを取材して、頑張っているお店の魅力を紹介していきます。

金沢・加賀・能登 頑張るお店 横井商店
おばあちゃんの手作りの味を今に伝える松波飴 横井商店

500年あまり前から奥能登・松波で手づくりの技が受け継がれ、おばあちゃんの味として親しまれてきた松波飴。時代の変化、食生活の多様化で需要が激減し、飴づくりを生業としていた店が一軒、また一軒と店を閉め、平成の時代に唯一その味を伝えるのは、横井商店ただ一軒となった。
松波飴の製造に心血を注いできた横井ヨシ子さんにお話を伺った。

●唯一残る横井商店の松波飴
商品を手に笑顔のヨシ子さんとお嫁さん戦後間もない頃に、香川県から縁あって松波へ嫁いできたヨシ子さん、その時から今は亡きご主人と二人で松波飴を作り続けてきた。「当時はまだ飴屋も何軒かありましたし、昔は、ほとんどの家でおばあちゃんが手づくりで作っていたものですよ。」と述懐する。
高度経済成長にともなって日本人の食生活が豊かになり、お菓子もバラエティーに富んだ商品がスーパーの店頭にずらりと並ぶ飽食の時代の到来で、松波飴の影が薄れ需要も激減した。松波飴を製造する店も遡ること30年あまり前に横井商店ただ一軒となった。ご主人亡き後も、一人で店を切り盛りし、今は、長男の千四吉さん夫婦が伝統の飴づくりの技を受け継いでいる。

昔はどこの家でもおばあちゃんが作る自家製の飴をおやつ替わりに炊いていたものだが、今はそのことを知る世代も少なくなってきている。過疎化が急速に進み、子供たちの数も激減している厳しい現実に晒(さら)されながらも、頑なに伝統の手づくりの味を守り伝えていくことは、並大抵でない苦労を伴うことは言うまでもない。

●おばあちゃんの愛情こもった手づくりの飴
原料となる米(右)と大麦(左上)とおやし(左下)松波飴の材料はいたってシンプル。うるち米とおやしから成る。おやしとは、発芽させた大麦を槌で叩いて粉末状にしたもので、もちろんこれも手作業で行う。お米を釜で蒸し上げると、そこに水を張り適温に冷めるのを長年の掌の勘で見極め、ちょうど良い頃合いになったところでおやしを入れ、一晩寝かす。翌朝、それを麻袋に入れて一気に絞る。絞り出した醗酵汁を大釜に入れて煮詰めていく。およそ5時間かけてのつきっきりの作業が始まる。大釜で煮詰まっていく飴を何度もすくって色と粘り具合を確かめ、ここぞというタイミングでヨシ子さんが冷水に一筋落として小さく丸めると琥珀色に輝く美しい飴ができあがる。
「お酒と一緒で仕込みの段階が最も肝心な作業です。ここで手を抜くと美味しい飴にはならないから、何十年同じ作業を繰り返していても、この時が一番緊張しますよ」と目を細めて語る。
長年の経験を積んでいても、稀に失敗することもあるという。原料に使用する大麦や米は可能な限り地元能登産のものを使っている。

●料理に、風邪薬に、滋養剤に、重宝する飴
豆飴(左)と固飴(右)化学調味料は一切使用しない天然材料の飴は、おやつだけでなく昔から料理にも重宝されている。
とりわけ魚の煮付けにお酒と醤油と飴を少し入れるだけで、飴がみりんと砂糖の役割を果たし、魚に照りが出て身もしまり、実に美味しい味付けになる。もちろん魚だけでなく、野菜の煮物、黒豆を炊くとき、ジャムづくりなどにも重宝する。また、昔から風邪薬としても用いられている。生の大根の輪切りに飴をかけて2-3時間浸け込んでおくと、大根のエキスと飴が混じった汁が出てくる。大根飴と言ってその汁は、風邪で喉が痛いときの特効薬として昔から知られている。
「咳がひどい時はこれが一番ですよ。」とヨシ子さんは太鼓判を押す。その他、妊婦さんへの滋養の品、あるいは産後の肥立ち、食あたりの薬としても同様に人気が高い。
昔は、農家の人が持ってきたお米を加工し、飴を作って手間賃をもらうのが飴屋さんの仕事だった。最近では、自然食ブームでおばあちゃんの飴を店に置かして欲しいとの要望にも応じている。「昔はこのあたりも子供がたくさんいて賑やかなもので、商売としても成り立ったが、子供の数も激減して今では町も閑散としていますよ。」と寂しそうに語る。

●伝統を守り伝えること
水あめ(600グラム)ケース入り飴づくりだけではとても生活が成り立たないことから、千四吉さんはインテリアの仕事が本業で、その傍ら飴づくりの手伝いをしている格好だ。
近年、おばあちゃんの手づくりの飴としてテレビや雑誌で紹介されたこともあって、夏休みや週末には観光客が店を探して買いに来る。そんな時は、「おばあちゃん一緒に記念写真を撮ろうと言われ、主役になってますよ。」と嬉しそうに顔をほころばす。いくつになっても看板娘の気持ちは変わらないようだ。
今は千四吉さんの息子さんも飴づくりを手伝うようになり、親・子・孫の3代が釜場に立つ光景が見られるようになっているそうで、500年以上続いている松波の飴づくりの技が、唯一軒残る店として後世に受け継いでいきたいとの思いが、お孫さんにも自ずと伝わっているのだろう。
87歳とは思えないほど、かくしゃくとして元気なヨシ子さんの日々の健康法は、言うまでもなく毎日欠かさずに食べている松波飴である。もちろん、日々店頭を訪れるお客さんとの会話も楽しみな様子。
お店としての負担が少ないイベントなどに出店し、松波飴を知らない子供たちに味を覚えてもらうといった努力もしている。

「駒渡のポケットパーク」、道の駅「桜峠」・「千枚田ポケットパーク」にも横井商店の松波飴が置いてある。伝統を守り伝えていくことは至難の業であるが、横井商店の場合は、ヨシ子おばあちゃんから息子さん夫婦へ、そしてお孫さんへと、商いとしては地味ではあるが、松波飴に込められた大切な愛情と真心が確実に受け継がれている姿を目の当たりにし、嬉しさとほほえましさがそこはかとなく込み上げてきた。

■インタビューを終えて・・・
日本人が便利になることと引き替えに忘れ去ってきた、大事な手づくりの自然の味を今も大切に守り育てている横井さん一家。この貴重な松波飴の魅力と優しい味を今の子供たちに知ってもらうことが何よりも必要なことだと痛感した。学校給食でこの飴を調味料として使った料理を提供したり、保育園や幼稚園のおやつに松波飴を提供するなど、後世に伝え遺していくためにも関係機関の支援を是非期待したい。

(平成19年12月取材)

横井商店 外観商 号 横井商店
所在地    鳳珠郡能登町松波12-83-1
創 業    明治時代
資本金 3100万円
電話番号 (0768)72-0077



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