「石川発!お店探訪記」 蕎麦処 くき(七尾市) 能登の風土と家族の真心でもてなす蕎麦処

(財)石川県産業創出支援機構「石川発!お店探訪記」金沢・加賀・能登 頑張るお店 では、石川県内の実店舗・ショップを訪問し、取扱商品の特徴・売れ筋、店づくりや店舗展開・経営方針、顧客サービスや今後の課題などを取材して、頑張っているお店の魅力を紹介していきます。

金沢・加賀・能登 頑張るお店 蕎麦処 くき
能登の風土と家族の真心でもてなす蕎麦処 くき

蕎麦好きが高じて蕎麦屋になる。七尾市中島町にある蕎麦処くきのご主人、久木信雄さんもそんな一人である。国道249号線を北上し、道の駅「ロマン峠」を過ぎ、しばらく走ると「蕎麦処くき」の大きな木製看板が見えてくる。その先を右折し、坂道を下った閑静な集落の中に築120年の趣ある店舗がある。奥さんの美和子さん、長女の詞集(しず)さんの家族3人でもてなす蕎麦処くきの暖簾をくぐってみたい。


●蕎麦好きが高じ、自ら蕎麦職人の道へ
古民家を活かした店内
高校を卒業後、すぐ調理師を目指し、料亭で3年あまり修業を積んだものの、紆余曲折があってその道を断念し、サラリーマンに転身する。「料理人を目指していた頃は蕎麦には全く興味がなかったが、就職した会社は各地に営業所があり、福井の営業所で会議があった時に、手打ちのおろし蕎麦を初めて食べました。その時、こんな旨い物があるのかと蕎麦に目覚め、それからは仕事で行く先々で蕎麦を食べ歩くようになり、大阪勤務時代には、休日になると家内を連れて奈良や京都まで食べ歩きに行っていました。
そんな中でも京都の亀岡にある拓朗亭(たろうてい)という美味しい蕎麦屋に感動し、帰りの電車の中で『田舎に帰って蕎麦屋をやろうよ、今ならまだ新しいことにチャレンジできるから』と家内と意気投合し、今日に至っています。」と述懐する。
そうと決めると即行動に移し、33年間務めた会社を定年を待たずに退社。好きな蕎麦を商いにすべく、10年あまり空き家状態になっていた奥さんの実家を改装して店舗にすることとし、店の準備は完了。
最も重要な蕎麦打ちの修業は、たまたま遠縁に蕎麦屋を営む人がいたことから、その門を叩くも、蕎麦打ちを教えてもらうことは叶わず、「竹林舎 唐変木」を紹介され、そこで蕎麦打ちの修業を積む。しかしながら、教えてもらえたのは蕎麦打ちのみで、蕎麦つゆについては全く明かしてもらえなかった。結局独学で関連する書物を読みあさり、自ら試行錯誤を重ねオリジナルの蕎麦つゆに辿り着き、開店を迎えることができた。


●唐変木な仲間たちの活動
九谷焼の食器類が並ぶ
唐変木のそば仲間で、玄蕎麦やからみ大根の共同仕入れを行ったり、勉強会の場を設けて互いに切磋琢磨している。また、自分たちのできる範囲のことをやろうとの思いからボランティア活動にも積極的に取り組んでいる。平成19年は、能登半島地震で被災した門前・穴水の人たちに手打ち蕎麦を振る舞って激励したり、石川整肢学園の子供たちや、親がいても育てられない子供たちが入所している梅光児童園の子供たちに、蕎麦打ちや蕎麦切りを体験してもらい、自分たちで打って切った蕎麦を食べてもらったという。さらに、唐変木な仲間たちの店が協賛してスタンプラリーを実施しており、全店を食べ歩いてスタンプが揃うと1000円分の食事券がもらえる。
蕎麦は、粉によって、打ち手によって味が変わるだけに、グループの店を廻ることで、いろんな味・喉ごしの蕎麦を楽しむことができる。


●能登半島地震に負けずに・・
「能登半島地震が発生した平成19年は、1月から地震発生まで対前年2割アップで売上が伸びていたので、今年はかなりいい成績が期待できるかもしれないと胸を膨らませていたところへあの地震が発生しました。大きな被害こそなかったものの、客足がぴたりと止まり、2週間の休業を余儀なくされました。その後、営業を再開したものの客足が伸びず、ゴールデンウィークも対前年よりも少なめだったことから、今年はかなり落ち込むなぁと覚悟していました。それでも一年を絞めてみると、対前年96%とわずかな落ち込みで済みました。これもお客様がいろんな方に私の店を紹介して下さったおかげです。」と感謝することしきり。
店舗が七尾市中島町にあることから、平日は地元七尾市や周辺の穴水町、志賀町、中能登町からの来店が多いが、週末になると金沢、珠洲、遠くは富山からの蕎麦好きの人たちで賑わっている。


●蕎麦処くきのこだわり
田舎せいろ(十割蕎麦)
くきの蕎麦は、北海道幌加内産の蕎麦粉をメインに使っている。しかも玄蕎麦で仕入れて自家製粉まで行っているのは、グループの中でもここだけである。「蕎麦は単純な食べ物だけにごまかしが利かず、開店して丸5年になりますが、いまだに心底満足できる蕎麦を打てていないですよ」と奥の深さを強調する。
通常は、単品メニューの他におまかせコース(2,000円)、蕎麦御膳(3,150円)があり、冬場はそれに牡蠣コース(2,500円)が加わり、常連客や観光客に好評だ。
「家内と二人だけで調理しているため、つまみの品数の点では物足りないものがあるかと思いますが、コースを予約して下さったお客様には、だし巻き卵や蕎麦がきの素揚げなどのリクエストにもお応えしています。」とサービス精神旺盛だ。さらに、料理と言えば、それを盛りつける器も重要な要素になるが、九谷焼の窯元が同級生にいることから、ご主人が注文した粗い土で焼成した絵付けのない、土の風合いを活かした蕎麦猪口や湯飲み、皿などの器類で蕎麦や料理が供され、くきの蕎麦をより一層引き立てている。
お酒は能登の竹葉・誉・宗玄、加賀の手取川・菊姫・天狗舞と地元産を取り揃えている。蕎麦メニューの中でもつなぎを入れない1日限定10食の十割蕎麦は、他の店では味わえない蕎麦本来の香りと独特の食感を堪能できるお薦めの逸品だ。


●ほっとするもてなしが信条
くきオリジナルの椅子
蕎麦処くきの店舗は、築120年になる奥さんの実家を改装しただけに、玄関から中に入ると、昔懐かしい田舎の我が家に帰ったような得も言われぬ安堵感に包まれ、まさに癒しのひとときを過ごすことができる空間だ。「年配の旅行者から『子供の頃に住んでいた田舎の家に帰ったようだ』とよく言われます」と満足げに語る。
娘の詞集さんが、両親の愛情がこもった料理を真心込めてサービスする姿はとても微笑ましく、親子のあうんの呼吸の成せる業である。将来的には詞集さんが父の後を継いで蕎麦処くきの二代目になるそうで、既にご主人が蕎麦打ちの指導をしているとのこと。「女性には大変な仕事ですが、娘の蕎麦打ちはなかなか筋がいいので、将来が楽しみです」と嬉しそうに語るご主人の笑顔に見送られて店を後にした。


■インタビューを終えて・・・
蕎麦は、打ち手の人柄が見事なまでに表現される食べ物である。くきの蕎麦は、物腰ソフトで温和なご主人の人柄が反映された優しく、穏やかな仕上がりになっている。親子の呼吸がぴったりと合った絶妙のもてなしに「ほっ」と一息ついてみませんか。

(平成20年3月取材)

くき 外観
商 号 蕎麦処 くき
所在地    七尾市中島町小牧ラ部69番甲地
創 業    平成15年
電話番号 (0767)66-6690
営業時間 11時30分~18時00分
(蕎麦がなくなり次第閉店) 
定休日 毎週水曜日
URL http://www.kukisoba.com



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