「石川発!お店探訪記」 近岡屋醤油(株)(羽咋郡宝達志水町) 昔ながらの醸造法で醤油づくりに真心を込め

(財)石川県産業創出支援機構「石川発!お店探訪記」金沢・加賀・能登 頑張るお店 では、石川県内の実店舗・ショップを訪問し、取扱商品の特徴・売れ筋、店づくりや店舗展開・経営方針、顧客サービスや今後の課題などを取材して、頑張っているお店の魅力を紹介していきます。

金沢・加賀・能登 頑張るお店 近岡屋醤油 株式会社

昔ながらの醸造法で醤油づくりに真心を込め 近岡屋醤油

能登有料道路を今浜インターで下り、今浜の風情ある街並みの中をしばらく走ると、歴史と伝統を感じさせる趣ある木造の醤油蔵が見えてくる。『ヤマチしょうゆ』のブランドで、大正時代から地元に親しまれている近岡屋醤油株式会社である。今も昔ながらの醸造法で醤油を製造販売する同社の近岡志緒美社長に、受け継がれる商いの心意気を伺った。



● ヤマチ醤油ができるまで

醤油の原材料は、良質な大豆と小麦、そして食塩からなる。醤油の風味は主にタンパク質、香りは小麦のデンプンであり、それぞれ微生物の働きによって醸し出される。

まず、圧力釜に大豆を入れ、そこに水を加えて蒸す。炒って砕いた小麦に蒸された大豆と種こうじを混ぜる。こうじ菌を利用し、こうじ室で3日間温度管理して醤油こうじを作る。そこに食塩水を加えてもろみ蔵で丸一年以上寝かせることで、もろみが醗酵し、醤油独特の色や香りに変化するのだ。できあがったもろみは、濾布に包んで平らにし、それを積み重ねる作業を繰り返すことで、その中から自然と醤油がしたたり落ちてくる。この状態のものが「生揚(きあげ)醤油」だ。

これを加熱殺菌し、醗酵を止めると我々が食卓で日々使う醤油が完成する。

自家製のもろみから全て手作業で仕込んでいる醤油蔵は、県内でも貴重な存在である。加えて当社は、前述の生揚げ醤油を使用している数少ない蔵だ。

石川県は甘口の醤油が好まれ、ヤマチ醤油には、濃口と薄口の2種類がある。さらに松と並に分かれ、松は刺身やおひたしなど直接食材にかけて食べてもらうべく生揚げの割合が高い醤油で、並は煮物など調味料として使ってもらうべく生揚げの割合を低くした醤油である。

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その他、濃縮タイプのだしつゆも製造している。このだしつゆは、京都の某湯葉専門店に湯葉のだしつゆとして納められており、大好評とのこと。その他、酢も醸造している。

「仕込み時期の温度管理にはとりわけ注意を払っていますが、それ以外の時期は、自然のあるがままの状態で寝かせています。何十年にもわたって醤油蔵の内部に定着している特有のこうじ菌がヤマチ醤油の味を守ってくれているのではないでしょうか。」と蔵の重要性を強調する。



● 嫁から嫁に受け継がれる醤油づくり

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大正時代から昭和初期にかけて、近岡家の親戚が自家用と近所に分ける程度に醤油を製造していたものの、後を継ぐ人がいなかったことから、近岡社長のご主人の祖母がそれを受け継いだのが同社のスタートである。その後、義父、義母、そして社長自身も嫁いできて義母からこの仕事を引き継いでいる。

このようにお嫁さんが代々商いを受け継ぎ、細腕で守り続けてきているわけだ。自身の子息は勤め人で後を継いでいないが、嫁いできたお嫁さんにこの仕事のバトンを渡すべく、目下根回し中のよう。

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「私自身サラリーマンの家庭で育ち、商売のことは一切分からないままの状態からのスタートでした。醤油の配達はかなりの力仕事だけに、女性の細腕で昔の10本入りの木箱ケースを運ぶのは至難の業で、配達の時は、最初に2本よけて8本だけ先に運び、後から2本持って行って箱に入れ、あたかも10本運んだかのようにしていました。とにかく、『醤油屋なのに10本入りの木箱も運べないのか』と言われるのが嫌で、そんな努力もしていました・・・。」と述懐する。



● ホームページでヤマチ醤油を発信

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少しでも新しい顧客獲得につながればとの思いから、専門業者に依頼してホームページを作成した。近岡屋醤油の歴史、商品の紹介・購入ページ、醤油ができるまで、おかみさん日記と題する日々のブログ、美味しいレシピと題する醤油を使った家庭料理の紹介から成っている。「ホームページを開設していなければ絶対に送ることのない九州や北海道にも商品を送ることができましたから、ウチの商品を知ってもらうという意味では、ホームページがあるおかげですが、商いのレベルで考えるとまだまだというのが現状です。」と自己採点は厳しい。

顧客から時々、ブログ「近岡屋醤油おかみさん日記」に対する反応も届いているが、それが売上に直結するまでには至っておらず、今後、改善していきたいとのこと。



●販路開拓と商品開発が今後の課題

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ヤマチ醤油は、能登方面では広く行き渡っているが、加賀方面は金沢市・野々市町あたりが南限とのこと。「販路開拓の努力が足りない面は否めませんが、金沢には大野醤油があり、その市場に食い込んでいくのはウチのような小規模な蔵には並大抵ではないですね・・。」と、参入の難しさと、生産量が限られていることのジレンマを滲ませる。

現状では、地元のスーパーをはじめとして能登地区の商店への卸部門が売上の7割あまりを占め、残りが小売という比率。

昨今の原材料の高騰で、同社もやむなく値上げに踏み切った。日々の生活に不可欠な醤油だけに、値上げしたことによる影響はほとんどないものの、それ以上に醤油の消費量そのものが年々減少していることが、業界にとっての課題であると同時に、その対応策として、様々な関連商品を販売するなど多品種化によって売上を維持する努力が業界全体で展開されている。そうした中にあって、同社の場合は限られた生産量とスタッフのため、多品種の醤油関連商品を開発することは容易ではなく、この点もこれからの課題である。



●次代につなぐ

chikaokaya_07.jpg「ヤマチ醤油の場合は、なんと言っても昔から醤油造りを続けてきているこの蔵が宝であり、蔵に宿っている特有のこうじ菌がヤマチ醤油を美味しくしてくれていると思っています。

昨年の能登半島地震でも幸いにして被害がなく、胸をなでおろしている次第です。

昔からのお客様から『やっぱりヤマチ醤油じゃないと』と仰って下さる皆様の期待を裏切らないよう、心をこめていい醤油を作ることを日々心掛け、ご注文をいただいたらすぐお届けできる「小回りの効く商い」がモットーです。小さいなりにも今日まで続けてきた商いなので、息子のお嫁さんが受け継いでくれ、さらに次代に繋いでいってもらえたらと願っているところです。

原材料の高騰、原油価格の上昇、醤油の消費量の減少等々、経営環境はなかなか厳しいものがありますが、お客様からの言葉を励みに頑張っていきたい。」と決意を新たにする近岡社長である。

インタビューを終えて・・・

小規模のメリットを活かした他にはできない醤油づくりこそが、同店の生き残りのポイントであると同時に強みにもなる。そうした観点からみると、一般消費者向けの既存の商品と同社の自信作である生揚げ醤油を活用したプロ向けの商品づくりが急務と思われる。小さいからできる希少価値を前面に打ち出した商品開発、ホームページを活用した販売促進戦略に注力することで、新たな可能性に期待したい。

近岡屋醤油 外観

商 号 近岡屋醤油(株)

住 所 羽咋郡宝達志水町今浜新イ108

電話番号 (0767)28-2001

創 業 大正8年

URL http://www.yamachi-shouyu.co.jp

ブログ

http://yamachi-shouyu.seesaa.net/