「石川発!お店探訪記」 加賀獅子頭 知田工房(白山市八幡町) 魂を込めた彫りの技で、日本人の心を今に

(財)石川県産業創出支援機構「石川発!お店探訪記」金沢・加賀・能登 頑張るお店 では、石川県内の実店舗・ショップを訪問し、取扱商品の特徴・売れ筋、店づくりや店舗展開・経営方針、顧客サービスや今後の課題などを取材して、頑張っているお店の魅力を紹介していきます。

金沢・加賀・能登 頑張るお店 加賀獅子頭 知田工房
魂を込めた彫りの技で、日本人の心を今に 加賀獅子頭知田工房

子供の頃に歌った「ドンドンヒャララ♪ドンヒャララ♪」という村祭りのフレーズを聞くと、日本人なら誰しもワクワクする。祭りと言えば太鼓と笛、それにめでたい獅子舞がつきもの。そんな日本の祭りに欠かせない獅子頭を製造販売しているのが、旧鶴来町は獅子吼高原の麓に店舗を構える知田(ちだ)工房である。
創業者である知田清雲氏と長男・善博氏父子、清雲氏の弟・勇吉氏と新吾氏、それに弟子の南勝幸氏の5人が一彫一彫に魂を込め、今日も獅子頭と対峙(たいじ)している。


●父と同じ道を歩む
知田清雲氏(右)と知田善博氏昭和8年、九谷焼の里・寺井町に生まれ、桐の産地だった旧鶴来町で育った知田清雲氏は、桐タンスを製造する仕事に従事する。そんなある日、獅子頭を入れる桐箱を製造している時に、『箱はどんなに美しく作っても所詮箱に過ぎない。この中に入れる獅子頭を彫ることこそが自分のやりたい仕事だ』と開眼。
17歳の時に加賀獅子頭の名匠・三階千嶺直門・林香堂師に弟子入りし、技術を習得し、以来60年あまりこの道一筋に研鑽を積んできている。

房主 知田清雲氏そんな父の姿を小さい時から見続けてきた善博氏は、「父から後を継ぐことに関しては一度も言われたことはなかったが、勉強よりもモノ作りが好きで職人になりたいと思っていました。それに何か見えない道ができていたような気がしています。素質はもちろん大事ですが、私自身は『好き』ということが一番重要な要素だと思っています。」とこの道に入った経緯を振り返る。


●獅子頭の材料は地元産の桐
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獅子頭を彫る桐の木は、地元鶴来の山林に自生しているものを伐採して使用している。 昔は桐のタンス・下駄など桐を使う商品があったが、現在では、そうした用途が激減し、桐を育てる職人もいなくなったため、昔植えられた木を切って財産を消費している格好だ。
ただ、年間に使う量が限られていることから当面は問題ないものの、近い将来は不安が過ぎる。

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通常、木材は乾燥させてから使用するが、獅子頭の場合は桐が乾燥してしまうと彫ることができなくなる。そのため、生木の状態でおおよその輪郭が分かる荒彫りの段階まで手を加えて置いてある。
特注の大きな獅子頭の注文が入った場合は、地元では桐の木が確保できず、全国から探し出す。獅子吼高原の獅子ワールド館に展示されているような大型のものになると国内では賄えず、巍魁(ぎかい)獅子頭はアラスカ産、黄金獅子頭は台湾産の木を使用している。


●祭りに欠かせぬ獅子頭
獅子頭お祭りの日程は決まっているため、注文を受けるとそれに間に合わせなくてはならない時間との闘いが始まる。それなら予め何体か彫っておけばいいと素人は考えるが、獅子頭はどれ一つとして同じ顔がない。それぞれの発注者が『我らの在所の獅子頭が一番』と思っていることから、注文を受けてから、そこに代々伝わる獅子頭と同じ顔を彫らなければならないからだ。
「お祭りの日に獅子頭がないのは最悪なことで、新作にせよ、修理にせよ、納期を絶対に守ること。これを第一に日々の作業に汗を流しています。」ときっぱり。
新しい獅子頭の注文は平均して年に1、2体、多いときで3体、大きさにもよるが1体を仕上げるのに半年から1年を要する。

一方、修理の依頼は年に10体ぐらいあるそうだ。「これがもしみんな同じ顔で良ければ、樹脂製や中国製の安価なものに取って代わられ、我々は生き残れなかっただろう。」と職人の誇りを垣間見せる。
獅子頭を彫る作業工程の中で、最も神経を集中させる難しい作業は、桐の丸太から獅子頭の大凡の形を決める最初の荒彫りの作業だという。ここを上手く乗り切れば獅子頭は完成したも同然という重要な工程なのだ。
知田工房では、原木から獅子の顔を彫るまでの工程を行い、そのあと、金具を付け、漆を塗り、金箔を貼り、真鍮の目を入れ、馬の毛を付けるといった分業工程が控えている。こうした分業で今まで行われてきていたが、時代と共に職人の高齢化が進み、後継者がいないことで廃れていく部分が生じ始めていることが、これからの大きな課題になってきている。


●各地の物産展は大切な営業の場
獅子頭の根付け
生活様式の洋風化に伴い、床の間に獅子頭を飾る家がほとんどなくなっている時代背景の中で、獅子頭だけではなかなか商売にならないと考え、干支の置物、ひな人形、獅子頭のミニ箸置き・根付けといった商品のバリエーションを少しずつ増やし、少しでも今の若い人たちに買ってもらえるモノづくりにも取り組んできている。

干支の置物
全国各地で開催される物産展に参加しての実演販売は、知田工房にとって重要な営業の場となっている。「本店にただ座っていてもお客さんは来てくれないわけで、年間に20回前後は物産展に参加して実演販売すると同時に、石川県に獅子頭を製作している知田工房があることをPRしています。物産展での根付けなどをはじめとした小物類の売上が商い全体の3割強を占めており、知田工房にとっては大切な仕事になっています。」と物産展への参加は、獅子頭のPRに不可欠な仕事であることを強調する。


● 我が子を送り出す親の心境
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「我々職人にとって一番嬉しいのは、完成した獅子頭がお祭りの場で舞っている姿を見ることです。と言っても目の前で見るのは照れくさいので、少し離れた場所からこっそり眺めていますが、この瞬間が職人冥利に尽きる最高の時ですね・・。」と顔を綻ばす。


● 全国発信の一助にホームページを開設
知田工房ホームページホームページはまだ一応作ってあるというレベルですが、開設して1年の間に、ホームページを見た沖縄県の方から注文が入り、遠く離れたところの方も見てくれているんだとびっくりしました。注文もさることながら、アクセスも徐々に増えており、そうして見て下さっている方がいることは嬉しい限りです。」と満足げ。


● 次代につなぐ
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善博氏の長男は中学一年生。今はクラブ活動が忙しいようだが、小学生の頃はよく祖父の横に座って、木を彫ることを楽しんでいたという。
三代目になるのかどうか、今は全く未知数だが、「本人が好きでやりたいと思えばやってもらいたいが、そうでなかったら無理にやらせるつもりはないが、息子が三代目を継いで頑張ってくれればそんな嬉しいことはないですね。」と顔を綻ばす。
「とにかく獅子頭を彫ることが楽しい」と語る善博氏の満面の笑みが印象的だった。


インタビューを終えて・・・
獅子頭を製造販売する知田工房にとって、獅子頭に関わる稀少な伝統工芸の技が途絶えていく気配が見え始めていることは深刻な問題だ。一端途絶えると復活させるのは至難の業であり、こうした後継者育成には行政の支援が不可欠である。ちなみに、金沢市では獅子頭の修繕費の7割を補助する制度があることから、修理の依頼がコンスタントにあるようで、こうした制度は仕事創出の一助になっている。


知田工房 外観
商 号 加賀獅子頭知田工房
住 所 白山市八幡町98
電話番号 (076)272-1696
創業 昭和28年
定休日 火曜日
URL http://www12.plala.or.jp/kagasisi/


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