「石川発!お店探訪記」 鹿野酒造(株)(加賀市八日市町)八重菊や 酒もほどよし 常きげん

(財)石川県産業創出支援機構「石川発!お店探訪記」金沢・加賀・能登 頑張るお店 は、石川県内の実店舗・ショップを訪問し、取扱商品の特徴・売れ筋、店づくりや店舗展開・経営方針、顧客サービスや今後の課題などを取材して、頑張っているお店の魅力を紹介していきます。

金沢・加賀・能登 頑張るお店 鹿野酒造(株)

八重菊や 酒もほどよし 常きげん 鹿野酒造(株)


加賀市八日市町地内に、蓮如上人巡錫の地として伝わる名水「白水の井戸」がある。
今から10年前、この井戸を再興し、清酒の仕込み水としても用いているのが、文政2年(1819年)の創業から190年あまり、6代にわたって受け継がれている『常きげん』の蔵元・鹿野酒造である。鹿野頼宣社長に酒造りに託す思いを伺った。

● 酒造りは「人」
農口尚彦 杜氏
日本酒離れと言われて久しいが、時代と共に杜氏の後継者がいなくなってきていることが、全国の蔵元にとっての最重要課題であることは言うまでもない。

かつて他社に勤めていた農口尚彦杜氏が65歳の定年を迎え退職することを耳にした鹿野社長が懇願し、自社の杜氏に迎え入れてはや12年。76歳とは思えないバイタリティーで日々酒造りに取り組み、社員の若手蔵人たちに杜氏のイロハを伝授している。「酒造りは住み込みでやる作業だけに人の和が一番大切で、造り手のコミュニケーションが円滑になっていないと、いかにいい原料を準備してもいい酒はできあがらない」と、鹿野社長は酒造りにとっていかに人が重要かを強調する。
現在、36歳の副杜氏を農口氏の後継にすべく力を注いでいる。

● 酒造りは「米」
酒造りに不可欠な酒米・山田錦遡ること14年あまり前、酒造りに不可欠な酒米・山田錦の割当が少なく、思うように確保できなかったことから、自分たちで山田錦を栽培することを決意する。

自社周辺の田に山田錦の苗を植えて栽培をスタートさせる。
当初は、普通の水稲に比べて稲穂の丈が長いため、台風が来るたびに倒れて苦労したようだが、今では毎年安定した収穫を得ている。

「これまで兵庫産の山田錦が一番と思っていましたが、自前で栽培した山田錦を使用した常きげん大吟醸が金賞を受賞したことで、米の栽培方法次第で地元産でも遜色ないことが証明されました」と顔を綻ばす。
とはいえ、自家米の収穫量は80俵足らずと限られているため、全出荷量に占める自家米の使用比率は5%程度と、まだまだ兵庫産・山田錦に頼らざるを得ないのが現状のよう。「この土地で山田錦が栽培できるのも地球環境の温暖化によるものだと思います。そう考えると、手放しで喜んでいいものか、このところ台風も少なくなってますしね・・・」と複雑な表情に。

● 酒造りは「水」
白水の井戸
蓮如上人が吉崎御坊にいた四年半あまりの間に北陸を布教して歩き、その途中この地に立ち寄り、掘った井戸がこの集落の生活水として使われていた。それが昭和40年代に上水道に切り替わり、存在そのものが忘れ去られていた。

たまたま、平成10年が蓮如上人の500年忌にあたり、この井戸の取材を受けたのを機に、再興することを思い立ち、平成9年に自費を投じて『白水の井戸』を整備する。

清酒の仕込みには自社敷地内の井戸水を使用しているが、再興を機に白水の井戸水も仕込み水として使い始めている。「田園酒蔵」とも称される当蔵にとって白水の井戸の佇まいは、その名に相応しい趣である。

● 『常きげん』の由来
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昔は米が貴重品だったことから、豊作の年は村人を集めて酒盛りをして祝ったものと思われる。
そんな折りに、4代目当主が常に豊作であって欲しいとの願いを込めて詠んだ『八重菊や 酒もほどよし 常きげん』の句から常きげんの名が誕生したという。

本来なら上機嫌となるところを「上」ではなく「常」にしたあたりが心憎い。

● 農口杜氏の山廃仕込みが看板
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健全な酵母の働きには、乳酸が不可欠だが、山廃仕込みは自然界の乳酸菌を利用するため、山卸(櫂入れ)を廃止した古式の仕込み方法であり、通常の速醸造りより日数が2縲怩R倍必要となる。これが農口杜氏が得意とする技であり、他の追随を許さない名人技である。その奥義を若い杜氏たちに伝授しているところでもある。

腰の強いコクと鋭いキレ味が特徴で、売上の半分近くは山廃仕込みが占め、自他共に認める鹿野酒造の看板商品になっている。それを裏付けるかのように、今年に入り能登杜氏組合能登町支部きき酒会最優秀賞、能登杜氏自醸酒品評会最優秀賞、金沢国税局新酒鑑評会優等賞と受賞を重ねてきた農口杜氏の渾身の美酒「常きげん 大吟醸」が全国新酒鑑評会金賞を受賞している。

● 日本酒には厳しい時代
鹿野酒造 ホームページ
バブル期のチューハイブーム、ワインブーム、その後の焼酎ブームと、度重なるライバルの台頭で、10年前に比べると、全国ベースで日本酒の消費量は半減している。

「日本人の主食が米であることを考えると、もっともっと日本酒を飲んでもらいたいと思い、日頃からききちょこ会などを開催しています。イベントを開くと若い女性がたくさん来てくれるのですが、それが思うように実需につながらない。やはり、日本人の食の洋風化がこれだけ進んでいる時代だけになかなか難しいですね」と複雑な表情だ。

かつての商いは、加賀の温泉旅館で成り立っていたと言っても過言ではなかったが、バブルが崩壊し、温泉旅館が相次いで倒産する事態となり、積極的に県外へ営業に出ることで何とか落ち込みをカバーしてきている。そうした努力の甲斐あってほぼ北は北海道から沖縄や海外まで、量の多少はあるにせよ、常きげんブランドが販売されている格好だ。

現在では温泉旅館の直売はほぼゼロに等しく、小売店が6割、問屋が4割(含むネット販売)という構成になっている。「今となっては高い授業料も払いましたが、温泉旅館のおかげで今日の基盤を築かせてもらったと感謝しています」としみじみと語る。

● 愛される酒造りに邁進
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農口杜氏の職人技を若い杜氏が何分の一かでも身につけてくれることを切望する鹿野社長は、「『常きげん』という名前に込められた代々の思いを大切に受け継ぐ蔵人と社員を育てること。人、米、水へのこだわりは、これまでもこれからも変わることなく、鹿野酒造の原点として伝え続けていかなければなりません。その意味でも、息子にはもっともっと技術や営業力を身につけ、代々受け継がれてきた酒造りへのこだわりを肝に銘じて頑張ってもらいたい」と思いを込める。

「日本酒は日本人のために先祖が英知を結集して誕生させたお酒であるだけに、たとえ時代が変わっても、日本人にとって、日本人の食卓に身近な存在であり続けたいと願っており、造り手である我々の努力が足りない点も否めませんが、日本人の心の癒しに欠かせないお酒として末長く愛される商品づくりに、これからも邁進していきたい」と決意を新たにする鹿野社長である。

インタビューを終えて・・・
全国の酒蔵が一様に杜氏の後継者育成に苦労している中、鹿野酒造さんには鬼に金棒とも言える黄綬褒章受章の現代の名工・農口杜氏という心強い達人が若手を指導・育成されていると伺い、酒造りの伝統を確実に受け継いでいく暖簾に託された思いを共感させていただいた。

鹿野酒造(株) 外観
商 号 鹿野酒造(株)
住 所 加賀市八日市町イ6
電話番号 (0761)74-1551
創 業 文政2年(1819年)
URL http://www.jokigen.co.jp/


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