(財)石川県産業創出支援機構の「お店ばたけ事務局が注目する15サイト!」金沢・加賀・能登 は、石川県内の実店舗・ネットショップ(HP)を順次訪問しています。
サイトを開設したきっかけ、役割や効果、そして販促やページ作りで工夫されていること、今後の目標などを取材して、頑張っているお店の魅力を紹介していきます。
ユニークなネーミングと信念に基づく米作りで安心と健康を後世に 「(株)林農産」
(※ 紹介動画はこちら)
国の農業政策に左右されることなく、自主自立の米作りに取り組み、「23世紀型お笑い系百姓」をキャッチフレーズに、ユニークなネーミングとこだわりの米作りで、お米のネット通販の業績を年々伸ばしているのが、野々市市にある(株)林農産である。3世代先の孫の時代まで見据え、笑顔をモットーに取り組むこだわりの米作りとは。同社の林浩陽社長にお話を伺った。
● ネット販売に活路を求めて農政に左右されることなく、自分で価格を設定できるネット販売に活路を求め、林農産のホームページをスタートしてから16年、今では年間に36,000件を超すアクセスがあり、年間平均注文件数は1,200~1,500件前後。そのうち8割強がリピーター客という高いリピート率を誇る。
お米は日本人の主食であり、毎日消費するため、2~3カ月スパンで再注文が入る。それだけ林農産のお米が美味しいことを多くの固定客が証明している格好だ。
「商売をするなら、作り手も買い手も楽しくなる商品づくりが私のモットーで、普通じゃないコシヒカリ、超普通じゃないコシヒカリ、林さんちの女王さまミルキークィーンなど、ユニークなネーミングでお客様をぐっと惹きつけて1回食べてもらえれば、味には自信がありますから。」と顔をほころばす。
売上全体に占めるネット比率は2割までに成長し、しかもほとんどが県外からの注文で、関東のシェアが圧倒的に高い。4,000円以上の購入で送料無料になることから、沖縄県、石垣島、八重山諸島、八丈島といった離島からも注文があると聞き、驚かされる。
● 東日本大震災による備蓄需要に困惑東日本大震災による原発事故を契機に、「備蓄」、「真空袋」などの検索キーワードで、林農産のホームページに辿り着いた新規客による備蓄を目的とした大量買いの注文が急増し、困惑の色を隠せない。
これまで、北海道は別として、東京より以北の地域、つまり米どころである東北地方からの注文は一切なかったが、原発事故を契機に、東北地方からの注文が増えている。
量が売れればいいという商いをしていない林社長は、そうした備蓄目的に対し、「お米は長期保存が効かないため、備蓄目的の大量買いは遠慮してもらいたい」と注意を促す。
林農産は、得意客にとってのかかりつけの農家を標榜しており、放射能被害を受けていない北陸の新米は価格が上昇しているが、同社の新米は再生産価格のため価格変動がなく、今年(平成23年)のように一般の小売店や量販店での店頭価格が上昇すると割安感を感じる。
● 完全無農薬栽培にも力無農薬栽培の一手法として知られるアイガモ農法にかつてトライするも、カラスと猫にカルガモを食べられてしまいあえなく断念。
その後、現在の紙マルチ栽培法に出会い10年余り続けてきている。
この方法は、田んぼに敷きつめた紙が太陽光線を遮ることで雑草が生えることなく、しかも2カ月あまり経過すると自然に溶けてなくなってしまう。
この栽培法は、10アールあたり1巻170mの紙ロールを3本使用する。「紙ロールを敷設する田植え機が1台300万円するため、導入にあたっては社員の猛反対にあったが、それを押し切って決断した」と振り返る。
この紙ロールを田んぼに敷き詰める作業と、田んぼ内で紙ロールを交換する手間はかかるが、紙マルチ栽培法にしてから何よりも大変な除草作業から解放されたという。
● 田んぼを守ることに使命感をもち現在、野々市市内の田んぼを60軒あまりの地主から借り上げ、平均220坪の田んぼが約500箇所に点在する。
そのため、効率面は決して良くないが、林社長はそれを称して『都市部の棚田』と表現している。
こうした棚田は稲の収穫だけでなく、ヒートアイランド現象を緩和する役割も果たしているだけに、将来の子孫のために農地を守っていくことにも強い使命感を持ち、日々の農作業に汗を流している。
「上には上がもちろんありますが、うちのお米を食べたお客様から、本当に美味しかった、スーパーのお米とは比較にならないといったお褒めの言葉をいただくことで、うちのお米は美味しいんだと実感し、それがまた翌年の米作りの原動力になっています」と力を込める。
● メルマガは重要なツールメルマガを書くのが重荷になっていた林社長だが、メルマガは得意客とのコミュニケーション手段であり、どんなに疲れていても一生懸命書くことを心掛けている。
例えば、稲刈りが終わったことを報告すると、それを見て新米の注文が入ってくるという具合に、こまめに書くことで、それ相応の反応(注文)があることを身を以て実感しており、得意客と同社をつなぐ文字通りパイプ役を果たしている。
当初は1カ月に1回やっと出していたメルマガだが、今では1週間に1回のペースでこまめに配信しており、「毎回ネタを考えるのが大変なんです」と苦笑する。
● 米加工品の売上増に邁進お米だけを販売していても付加価値がつかない。そのため、お米を加工したかきもち、お祝い餅、お鏡餅などの加工食品の売上増に力を注いでいる。
その一貫として、同社を含め農家10軒が共同で近江町市場にアンテナショップ「風土金澤」を出店。
1次・2次・3次合わせて6次産業化と銘打ち、加工食品の売上拡大に邁進している。現在売上全体の3割程度が加工食品だが、これを半分にまで伸ばしていきたい考えだ。
● 食育がライフワーク林社長は、16年前から食育の出前授業を幼稚園や小学校で行っている。
「食と命の大切さを伝えることは、私の志であり、子供達にそのことを知ってもらうため出前授業をしています。子供達に3本の苗を植えてもらい、1本目は鳥の分、2本目は虫の分、3本目はみんなの分だよという田植えの「呪文」を教えています。この「呪文」を教えるようになってから子供達がきれいに田植えしてくれるようになった」と嬉しそうに語る。
これは、みんなのことを思いやれる人間になって欲しいとのうんちくのある言葉でもある。
こうした地道な活動が、子供達に農業の大切さ、自然の恵みへの感謝の気持ちを養い、巡り巡って林農産のお米の消費増につながっている。
23世紀型お笑い系百姓のテーマである、3世代後の子孫のために頑張っている農業の自己採点を伺うと、「私が農業に従事して30年あまり、その間に少しは進展してきたと思っており、これからも地道に継続していきたい」と決意を新たにする。県内はもとより県外からも食育の講師として招かれるまでになった食の伝道師・林社長の存在は、ますますその重要度を増している。
インタビューを終えて・・・
百聞は一食に如かず(!?)、早速、超普通じゃないコシヒカリを買い求め、玄米で食してみた。何よりも完全無農薬という安心・安全が保証されているだけに、安心して口に運ぶ。玄米の香ばしい香りが口の中に広がり、噛むたびに甘みが増し、納得の味わいである。
社 名 株式会社 林農産
住 所 野々市市藤平132
電話番号 (076)246-1241
URL http://www.hayashisanchi.jp