「eコマースでこそ培える、地方発信力」-成功者に学ぶホームページ運営のためのヒント-  (株)ヤマウチ

「eコマースでこそ培える、地方発信力」- 成功者に学ぶホームページ運営のためのヒント -

  (株)ヤマウチ(山内鮮魚店) 通信事業部本部長 山内 恭輔氏

eコマースでこそ培える、地方発信力


カメラマンから海産物商へ

(株)ヤマウチ(山内鮮魚店) 山内恭輔氏私の住む南三陸町は、人口1万8千人の町でしたが、東日本大震災で被災し、人口が4000人に減少し、店舗も加工工場も全て津波に流されゼロの状態になってしまい、現在は仮設の店舗で再スタートしたところです。

私 は南三陸町で1975年に生まれ、現在39歳です。北海道の大学を卒業後、親父がお膳立てをしてくれた築地市場の就職先を断り、兼ねてから夢だったカメラ マンになるため業界に飛び込みました。それから3年あまりアシスタントを経験して独立し、ようやくいろんな楽しい仕事をさせてもらえるようになった頃に、 親父から帰って来いと言われるようになり、3年あまり延ばし延ばしにしていました。そんな間もおふくろから自社商品などの食材が送られてきていましたが、 小さい頃から魚ばかり食べていたので食べる気にならず友達に分けていました。ある時食べるものがなく、仕方なくおふくろが送ってきた焼き魚パックを食べたところ、あまりの美味しさに感動しました。それがきっかけとなって、2005年に南三陸町に戻ったのが今日の私の原点です。

セミナーの様子



ネットショップを開設するも全く売れず

(株)ヤマウチ(山内鮮魚店)のホームページ当時の我が社はカタログ通販を10年ぐらいやってきていましたが、ネット通販はまだ手がけていなかったことから、私が戻ったのを機にネットショップをスタートさせました。やればすぐ売れると簡単に思っていましたが、実際には全く売れず、 月に数千円の売上しかなく、3年あまりこの状態が続き、何故売れないのかが全く分かりませんでした。

入社以来、通販事業部のパソコンの前に座っているだけで、狭い社内にあって他の社員からは「この息子は何をやっているんだ」みたいな冷たい目で見られながら、朝7時から翌朝3時頃まで、とにかくパソコンと向 き合っていましたが、やがて体にも支障が出るようになってきていました。



リニューアルで活路を求める

父親から3年で結論を出すように言われていたこともあり、満を持して以下のような観点からネットショップの改善に取り組みました
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・ 分析(他社と自社の違い)
その頃、南三陸町でネットショップを運営している人はほとんどなく、誰にも聞くことができず、とにかく売れていると評判の他社サイトを研究し、自社に欠けている点を見つけ出し、そこを補っていく地道な作業を繰り返しました

 ・ 売れる商材を作る・・・断トツの看板商品を1つか2つ
ネットショップでヒット商品となる売れる商材は、せいぜい1つか2つぐらいしかないものです。そこで自社にしかない看板商品を作ることを目指しました。とはいえ、魚のことを全く分かっていないため、父親に「この魚は何で美味しいのか」と聞くと、「うまいものはうまい」という答えしか返ってこず、自分なりに魚について勉強し、それぞれの魚の魅力は何かと言った付加価値を書き加えてページを膨らませていきました

 ・ 専門家になる(自社商品のプロ)
自社商品について自分が最も分かっているプロでないと商品は売れない。

 ・ 発信し続ける
メールマガジン等で情報発信をし続ける。

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リニューアルが奏功し、業績急伸

こうした地道な努力を重ねたことで、2005年に参入し、2008年まで全く売れなかったのが、2008年暮れにリニューアルしてから売れ始め、2009年は年商7,000~8,000万円をほぼ自社サイトだけで売り上げるまでになりました。
2010年にはスタッフ総出で寝る間も惜しむほど受注作業に負われる日々が続きました。こうなってくると社内での評価が一気に変わってきました。日本の場合はいろんな賞を取ると株が上がる傾向があり、当社も日本オンラインショッピング大賞「最優秀小規模サイト賞」等を受賞し、売上を上げたことで、ようやく自分の居場所が地元にできました。
震災前には私を含め6人のスタッフで6店舗を運営していましたが、現在は水産物の水揚げが復興するまで自社サイト1店舗に縮小しています。



美味しさに感動した食材を看板商品に

看板商品を作るということですが、私がその美味しさに感動した鱈に目を付けました。それまで鱈を丸ごと1匹付けて冬場に販売していた鍋用の寒鱈セットがあったのですが、私が戻ってから、もっとお客様が調理しやすいように、半身は刺身用に、残りの半身は鍋用に全て捌き部位ごとにパッケージする形に変更しました。鱈は足が速く、水揚げしてから2日ぐらいしか賞味期間がないため、この鮮度を売りにしようと考えました。そうなると、水揚げして捌いてその日の内に発送しないといけないため、社員には大変な思いをさせていますが、自分が美味しさに感動したことをお客様にも伝えたいとの思いから「感動の寒鱈セット」と名付け販売を始めました。食べてもらえればその美味しさは必ず分かってもらえるとの自信が裏付けです。
寒鱈の旬は1月から2月にかけての1ヶ月間だけですが、2005年には100セットだったのが、2014年には1,800セットを完売するヒット商品に成長しました。この1ヶ月の間に2~3回リピート購入されるお客様が多くいらっしゃいます。自分の思いをお客様にこれでもかと伝えられるのがeコマースのいいところで、紙媒体だと書けることが限られてきますが、インターネットならどれだけでも書くことができます。インターネットはお客様と直接繋がっているので、お客様に自らの熱い思いを伝えることに力を注いだ結果として、発信することが「喜び」に変わり、食べたお客様に感動していただき、幸せになっていただく「役割」を自らが得たことを実感しています。



情熱を前面に打ち出し、顧客数11万人!

自社商品に込めた思いをお客様に伝えないと分かってもらえない。インターネットを活用して販売してきた結果、気が付いたら顧客数が11万人になっていました。人口1万8千人の田舎にいても全国を相手に販売できるネットビジネスはどこにいても関係ありません

eコマースはなんて素晴らしいんだろう!

 想いに共感し、買ってくださるお客様がいる

 思う存分「伝える」ことができる
さらにフェイスブック(山内鮮魚店)ブログ(山内鮮魚店店長ブログ)等を活用することでお客様とのコミュニケーションもでき、もはや「顔」が見える商売になったと実感しています。



ネットの成功がBtoBにも波及

自分の商品の魅力を徹底的に分析し、その魅力をページに綴ることで、それに付随して営業力もついてきて、感性が研ぎ澄まされることで、商品開発にも優位に働くようになります。そうした努力を重ねるうちにBtoBの売上が倍になりました。その主力商品は「しっかり朝ごはん」 と銘打ったさば塩焼き、ぶりっ子味噌焼き、たら味噌焼き、銀鮭酒塩焼き、さけ粕焼きなど旬の魚種が各2切入った小袋入りの商品です。袋のまま30秒温める だけの手間いらずで、忙しい朝にぴったりなことからヒット商品になっています。スーパーにしか卸していないBtoB商品です



みやぎEC発足

2013年3月27日、宮城県のEコマース業界の底上げを図るべく、「みやぎEC」を発足させました。インターネットショップを運営している30社のメンバーで、月に2回勉強会を開催しています。メンバーから写真の撮り方を勉強したいとの要望が多かったため、かなりの回数の写真撮影の勉強をしています。 宮城は食品メーカーが多いことから、商品の撮影にあたってどんな器を使うといいか、テーブルコーディネートも含めて専門家を呼んでアドバイスしてもらう勉強会も行っています。
宮城県は非常に物には恵まれているのですが、発信が下手なのです。私がみやぎECを発足しようと思ったのは、ネットショップの運営はとにかく孤独との闘いだとの思いを抱いていたところ、東日本大震災の2ヶ月前に「高知e商人養成塾」との出会いがありました。
こ こから講師に来て欲しいと呼ばれ、写真の撮り方の講師ならと安易に引き受けて出かけていきました。現地に着くと100人あまり集まっていて、2時間ぐらい 喋った後に懇親会があったのですが、お酒を飲んでいる間も、私が食事する間もないほど、次から次と参加者の質問攻めに合い、あまりの真剣さにびっくりさせ られたのです。
これは是非、宮城でもやらなければと思ったのがそもそものきっかけです。それで2011年3月17日に第1回の勉強会を開催する予 定だったのですが、東日本大震災が発生したために2年あまり遅れてのスタートとなりました。高知の皆さんの活動を目の当たりにし、東北は10年遅れている と痛感させられました。インターネットの世界で10年遅れというのは恐ろしいことです。
その要因を分析してみると

1.ものづくりは真剣にやっているが、発信は消極的
2.情報社会に慣れていない
3.BtoBで何とかなっていた
こうした要因に加え、宮城の場合は「自分たちは東北の中心」みたいな変なプライドが邪魔をし、東北は10年遅れてしまっていたのです



「誰から買う」時代の到来

みやぎECがスタートして以来、2ヶ月に1回は全国から講師を招いて勉強会を重ねてきたことで、会員の意識もかなり変わってきています。最近、講師の皆さんがよく言われるのは、「どこで買う」時代から「誰から買う」時代にこれから益々なっていくということです。
ブログやSNSなど店主のプライベートを発信する手段が豊富にあるため、お客様とのつながりが親密になってきています。従来のBtoBのビジネスでは、自社→商社→販売者→お客様という図式で、我々の思いはなかなか正確にお客様に伝わらないのに対し、インターネットは自社→お客様のため、思う存分自社商品の魅力を伝えることができる素晴らしい商いだと痛感しています。
これからも故郷の素晴らしさを全国に発信し、震災を機により一層団結して頑張っていきたいと思っています。
ご静聴ありがとうございました



山内恭輔氏と西田上氏の対談*

山内氏と西田氏の対談

西田氏):写真右
 講演に引き続き、山内氏にお話をうかがいたいと思います。まず、ホームページの更新等は一人でやっているのですか、それとも何人かのスタッフでやっているのでしょうか。
(山内氏):写真左
 基本的な作業は全て私が一人でやっていますが、受注業務はスタッフに任せています。

(西田氏) 1ページ仕上げるのにどれぐらいの時間を要しますか。
(山内
氏) 写真撮影も含めて3時間ぐらいですね。

(西田氏) ホームページの制作ソフトは何を使っていますか。
(山内
氏) フォトショップとドリームウィーバーです。


(西田氏) ページを制作する時に一番気を付けていることはどんなことですか。
(山内
氏)
 ベネフィットを重要視しています。具体的には、お客様が自社の商品を購入されて、どう幸せを感じていただけるかに力を注いでいます


(西田氏)
 私が一番やってはいけないと思っているのは、九谷焼は食べられませんが、素敵だと思って買ったのに現物が届いたらがっかりさせてしまうことです。そのため実物よりも2割程度、光りの加減や色味を調整し、劣化させて写真を撮っています。それが奏功してか、購入されたお客様からのレビューの多くが「実物の方が素敵でした」というのが多いです。こうして1度、写真より実物の方がいいと思ってもらえると、その後は安心してリピートしもらえます。
『感動の寒鱈セット』以外で、年間コンスタントに売れている商品はありますか。
(山内
氏)
 殻付きホタテ(生食用)に専用ナイフとレシピを入れたものが第1位で、第2位はカキ(生食用)です。やはり生食の人気が高いですね。


(西田氏) 東日本大震災による原発事故等の風評被害はありますか。
(山内
氏)
 ありますね。一昨年ぐらいまではメールや電話での問い合わせの際に必ずと言っていいほど「放射能は大丈夫ですか」と聞かれました。それに対しては放射能検査を実施し、その検査結果をホームページでも公表しています。


(西田氏)
 海産物には風評被害が付き物だと思いますが、そうした影響を受けない海産物以外の商品開発はしていないのですか。
(山内氏)
 いろんな考え方があると思いますが、当社は南三陸町という海産物で生きてきている町で生まれ育ってきています。しかも震災の影響や後継者難で、鮮魚店が3軒しかない現状を鑑みた時に、うちが南三陸の鮮魚業界を牽引していかなければとの強い思いがあり、例え売上が思うように伸びなくてもこの道を歩んでいく覚悟です。


(西田氏) みやぎECの今後はどのようにしていきたいですか。
(山内
氏)
 売上を上げてみんなで幸せになりたいですね。
みやぎECのメンバーの9割が食品関連のため、風評被害を乗り越えて頑張らないといけないし、自力で生き残れる力をつけてもらいたいと願っています。メンバーはやる気のある人ばかりなので、大いに期待しています。


(西田氏)
 時間はみんな平等であり、彼らが追い付こうとするためには人の倍働くしかないが、からだを壊しては元も子もありません。やらなければいけないことが膨大な量あるため、できることから地道に片づけていくしかありません。山内鮮魚店のこれからの方向性について教えて下さい。
(山内
氏)
 現状ではBtoBとBtoCが半々の比率ですが、お客様の喜びが伝わってこないBtoBは将来的には縮小し、BtoCの比率を伸ばす事でお客様と直接繋がり、深い関係性を築ける業務形態を目指して行きたいですね。


(西田氏) ネットショップのこれからはどのようにしたいと考えていますか。
(山内
氏)
 東日本大震災前は、本気で年商10億円を目指していました。今は原料確保がとても困難になっているため、大量受注できないことがネックです。今年5月中にホームページをリニューアルする予定で、何とか風評被害を払拭し、売上増につなげていきたいと思っています。


(西田氏) 現在の御社の従業員数は何名ですか。
(山内
氏) 現在はパートを含めて40名です。


西田氏) 雇用を増やす計画はありますか。
(山内
氏)
 南三陸町の働く場所は、水産業が多いにもかかわらず人が足りないのが現状です。いわゆる3Kの仕事が敬遠されるからです。とはいえ外から採用したくても住む場所がないのでこれも難しいのが現状です。


(西田氏) 今は通販事業部の部長ですが、社長になる日はそう遠くないですか。
(山内
氏)
 まだ先だと思います。うちは家族経営ということもあり、働いているスタッフにとっては嫌なものだと思うので、それは将来的にはやめたいと考えています。


(西田氏)
 東北はものづくりは素晴らしいが情報発信をしないと言われましたが、石川にも同じことが言えます。石川がなぜ情報発信しないのか、それは見れば分かるだろう、いいものを作れば売れると思っているからですが、現実には売れていません。
(山内
氏) 他の商品と自社の商品の違いを明確に発信することが大切だと思います。


(西田氏)
 例えば餃子を買いたいと思った時に楽天のランキングを見ても、安いから売れているのか、美味しいから売れているのか、そこまでは写真を見ただけでは分かりません。先程の山内氏の講演にもあったように誰から買うかがキーワードになってくると思います。
(山内
氏)
 きれいなページを作ろうとするよりも、自分の熱い思いを相手の心に響かせる1行の文章の方が効果があります。うちの商品で言えば、鱈は天候に左右され、漁師さんが漁に出られない日もあります。そんな時はお客様に全て電話で連絡を入れています。インターネットだからこそ電話をかけて発送日が遅れることについて了解をもらっています
(西田
氏)
 今の話に関連しますが、昔は電話をしたくないからネットで注文したのですが、今はネットの受注確認メールを見ない人が多く、確認の電話を入れるとその程度のことでわざわざ電話してくれたのかと喜ばれます。うまくいかないのはうまくいくことをやっていないからで、この簡単なことをやればいいだけなのです。
私はシャイなので15年間一人でコツコツとやってきましたが、中には「何日の何時に伺ってもいいですか」と突然電話してきて、遠方からわざわざ訪ねてきて、売れるショップになるためには何をすればいいのかを実地研修しに来る熱心な若者がいます。そういう行動派の人は必ず成功します

(山内
氏)
  eコマースの世界における大御所の方たちは、立ち上げた時に大変な苦労を重ねられている方が多く、自分の分からないことを聞けば何でも親切に教えてくれ、 お願いすれば全国から快く講師として飛んできてくれます。私も今日、ご縁があって石川県からお招きいただき、初めて金沢を訪れることができました。今日参 加された皆さんには、是非一度ご自身の目で南三陸町の今を見に来ていただければと思っております。本日はありがとうございました。


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