「石川発!お店探訪記」 京武蔵 (金沢市) いち早く法要専門に転換し時流を先取り – ISICOお店ばたけプラスブログ

金沢・加賀・能登 頑張るお店 京武蔵

金沢市森本に、「武蔵屋食堂」として昭和34年にスタートしたのが京武蔵の原点である。昭和54年、結婚式場として新たなスタートを切るべく現在の会館を建設。結婚式場の仕事をするにあたり京都の京と武蔵をくっつけ京武蔵とした。
ブライダル業界の競争が激化する中で、180度事業転換し、景況に左右されない独自の法要専門館という業態を確立させ、自らを法要アドバイザーと位置づける二代目・梅原竜一社長に経営戦略を伺った。

●結婚式場から法要専門館に180度方向転換

遡ること15年余り前、ホテルや専門業者によるチャペルウェディングが主流になり始め、旧来の施設しかない同社は、徐々に売上が低迷し、結婚式よりも法要の売上が上回る状況に直面する。
「新たに設備投資をしても競合に勝てる見込みがないこと、両方の看板を上げるわけにはいかないことなどを勘案し、余力のあるうちに法要専門館にシフトすることを決意した」と述懐する。とはいえ、改装した当初は、まだまだ法要は自宅で行う家がほとんどで、仕出し業務のウエイトが高かった。外の施設でする法要やイスに座っての会食にまだまだ抵抗がある過渡期でもあった。そんな時代に、他に先駆けてイスに座ってゆっくり食事できるメリットを声を大にして宣伝してまわり、一度経験してもらうと、『足が楽で良かった』と口コミで評判が広まり、会館での法要が徐々に増えて軌道に乗ったのである。
親戚から親戚に口コミで評判が広まっていき、「おかげさまで土日は毎週満館になっています。」と顔を綻ばす。

●ターゲットを絞った営業展開で業績拡大

葬儀社と提携していることから、まず葬式できっかけをもらった先はもちろんのこと、新聞のお悔やみ記事をコンピューターで管理し、四十九日や一周忌にはDMを発送し、新規獲得の努力をしている。
法要専門館を前面に打ち出し、積極果敢に市場を開拓してきたことから、在では売上全体の7割が法要、残りの3割が宴会や慶事という内訳になっている。
冠婚葬祭は景況に関係なく、頂いたご恩は返さないといけないという考えが浸透しており、景況等には左右されにくい。また、飲食関係の店舗にとって飲酒運転の罰則強化は大きな痛手になっているところが多い中で、同社の場合は昼間の利用が多く、もともと昼間はあまりお酒は出ないことや、マイクロバスで送迎していることから影響は限りなくゼロに近かったという。

●営業ツールとしての引き出物パンフを作成

冠婚葬祭には、香典返しや内祝といった引き出物がつきものである。以前は、引き出物といえば乾物の詰合せや海苔が定番であったが、自らが営業で回っている中で、『もう少し他のものがないか』とよく聞かれたことから、何とか扱い商品のバリエーションを増やしたいと考えた。
「特に金沢の方は、例えば同じ饅頭でもどこの饅頭かを気にされます。ブランド志向が強いので、名の通った暖簾で商売されている店の商品を要望するケースが圧倒的に多い」という。

そこで閃いたのが、引き出物の商品を集めたパンフレットを自前で製作することだった。まずは親しい社長を説得して業販の承諾を取り付け、その店が入ってくれたからと人間関係のある店を順番に回ってパンフレットを製作する協賛も引き受けてもらい、「金沢 暖簾の味」というパンフレットが完成した。将来的には、協賛店舗をさらに充実させ、同店の利用客に限定せず、インターネットを介しての通販も視野に入れている。

●最小の投資で最大の効果を生み出す津幡店

平成18年に出店した津幡店のある舟橋地区は、平成20年春には津幡バイパスと8号線のジャンクションになり、石動から15分、宇野気や高松からも10-15分、津幡地内からは5-6分、森本からでも15分で到着できる。そんな利便性もあって、オープン以来、津幡から高松の全エリアから利用客を吸引している。この津幡店と森本の本店で、金沢北部から高松までの商圏をカバーし、売上も平成19年は、対前年30%アップと好調だ。

津幡店は常時人を置いていない。予約が入った時だけ本社から必要なスタッフを派遣することで、維持経費はほとんどかからない。予約がなければ完全クローズで水道も電気も使わない。予約がある忙しい時だけ契約しているスタッフが出社してくるため、人件費負担も最小限で済む。調理も本店で下仕込みを済ませて津幡店に配送し、そのまま温蔵庫または冷蔵庫の中に入れて配膳の直前まで保ち、お客様が揃ったら配膳する作業のみ。つまり津幡店は厨房機器も最小限の設備で済み、食事後の食器類も全てそのまま本店に持ち帰り、本店で洗うため、津幡店はゴミ箱も下水槽も要らないゴミの出ないエコ店舗なのだ。
多店舗展開ではあるが、維持経費がほとんどかからず、最小限の投資で済む、メリットが大きい展開である。

●経営革新の申請作業を通じビジョンが明確化

これからの取り組みの背景として、県の経営革新の認定(平成17年認定)を受けるにあたり、自ら5ヵ年計画の作成に取り組んだ。「1年ごとに目標と現実はどうなのか調査が入ることもあり、真摯に取り組み、その計画を実現するためには、今何に取り組まなければいけないのか、それが明確になり、自分の事業を見直す上でも実にいい勉強になった」と振り返る。

●創立50周年の節目を機に更なる飛躍を目指す

平成19年11月1日、同社は創立50周年の記念式典を行った。その節目に当たって5カ年計画を策定し、その中で、現在の2店舗から全4店舗体制への移行を謳っている。

具体的には、鞍月の県庁舎周辺、山側環状の杜の里あたりで好条件の場所があればと目論んでいる。ロードサイドビジネスと異なり、一等地に目立つように建てる必要はない。ほとんどのお客様は同社のマイクロバスで送迎する上、法要という目的で施設を探して行くため、裏通りに入っても問題はない。そうなれば土地の値段も安くなり、投資経費も抑制できる。

「親父との二人三脚の中で、親父は思いつくと即決断即実行するタイプで、私はそれにブレーキをかける役目をずっと担ってきた。つまり、アクセルとブレーキで巧くやってくることができたが、社長になって6年が経ち、親父も会長に退いたこれからの時代は、私が自分でアクセルを踏みながら適時ブレーキも踏まなければいけない。そのあたりの兼ね合いをよく考えて邁進していきたい。と同時に、冠婚葬祭のお客様のニーズを絶えず先に先に考え提案していくことによって、法要という狭い分野ではありますが、ウチが他社よりも先に行けるし、守っていけるのではないかと思っています」と意欲みなぎる梅原社長である。

■インタビューを終えて・・・

多店舗展開しても維持管理費や人件費を最小限に抑えることが出来る特殊な業態であること。冠婚葬祭は景気に左右されず、しかも料理と引き出物を同時に受注でき、高価格帯のウエイトが高いこと。急激に多様化するウエディング市場に早々に見切りをつけ、法要専門に特化したことが今日の成功の礎となっている。18歳で車の免許を取り、仕出し配達の手伝いからスタートして既に通算25年のキャリアを有する梅原社長の次なる一手が楽しみである。

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