外国人留学生と手を携え、絆が深まる商店街づくりに一丸 柿木畠振興会
(平成25年1月取材)
外国人留学生と手を携え、絆が深まる商店街づくりに一丸 柿木畠振興会
金沢市広坂の金沢21世紀美術館と金沢市役所に挟まれた通りを進み、金沢市役所裏に今も残る金沢城西外惣構堀を右に曲がると迎えてくれるのが、柿木畠商店街(かきのきばたけ)である。
同商店街は飲食店が多いのが特徴で、おでん・寿司・居酒屋・蕎麦といった和食だけでなく、中国料理、フランス料理、スペイン料理、イタリア料理、韓国料理と国際色豊か。
なおかつ金沢21世紀美術館のお膝元とあって、外国人観光客が多く訪れることから「外国人にもやさしい商店街」を標榜して邁進する柿木畠振興会の新木久雄理事長ならびに竹内公明常務理事にお話しを伺った。
◆『水掛け神輿』で商店街が一つに
神輿や担ぎ手に水を掛けて参加してもらえる 『水掛け神輿』平成18年、柿木畠振興会役員の若返りに合わせ、平成5年から商店街の定番イベントとして開催している 『柿まつり』 に、もっと活気をプラスするお祭りができないかと意見交換を重ねた結果、自分たちが参加するだけでなく、見る側の人にも神輿や担ぎ手に水を掛けて参加してもらえる 『水掛け神輿』(みずかけみこし) が浮上。
柿木畠一帯は、江戸時代に金沢城の火除地として柿の木が多く植栽されていた防火の町としての歴史があり、そこにも通じることから 『水掛け神輿』 を実施することに。
柿木畠振興会には神輿がなかったため、振興会の会員たちが一から手作りで仕上げたお手製神輿を準備し、平成18年10月の 『柿まつり』 の際に記念すべき第1回の 『水掛け神輿』 が行われた。
活気あふれるお祭り「水掛け神輿」
町内の1軒1軒の商店や民家の前で止まって掛け声をかけて商売繁盛、家内安全を祈願し、威勢よく水を掛けてもらい、この日ばかりは商店街に熱気と活気が満ちあふれた。
◆『水掛け神輿』 が柿木畠を一躍有名に
200人あまりが参加し、7基の神輿が乱舞する盛大なお祭り1年目は1基の神輿を30人ぐらいで担いでいたお祭りが、6年目を迎えた昨年(平成24年)は200人あまりが参加し、7基の神輿が乱舞する盛大なお祭りに成長。
金沢市内に神輿を担ぐ活気あるお祭りがないこともあってか、1回見ると次は知人を誘ってまた見に行きたくなるお祭り効果で、年々参加人数も観客も増え、同時にネットで情報発信されることから、 『水掛け神輿』 は数年足らずの間に柿木畠の代名詞に。
留学生神輿(みこし)神輿は本神輿、女神輿、留学生神輿の3基のほか、街の活性化に協力する企業神輿が4基参加。
企業には1社3万円の協賛金を出してもらい、その企業に相応しい神輿を振興会で制作し、協賛企業をPRしながら町中を練り歩く。
今後さらに柿木畠の応援団企業を増やして盛り上げていきたい考えだ。この日は柿木畠の全てのお店の店主が担ぎ手として参加するため、商店街のお店は全て閉めて全員参加で盛り上げる。
手探りでスタートした 『水掛け神輿』 だったが、今では柿木畠商店街の人たちだけでなく、金沢市民も毎年楽しみにしている夏の人気イベントとしてすっかり定着している。
『水掛け神輿』集合写真
◆『柿まつり』 に 『カレー博in柿木畠』 をプラスし魅力アップ
カレー博in柿木畠夏の 『水掛け神輿』 が有名になったことから、秋の 『柿まつり』 に柿木畠をアピールできる新しい要素をプラスすべく知恵を絞り、誰もが好きなカレーを商店街の各飲食店が特色を出して提供する 『カレー博in柿木畠』 が誕生。
3回目の昨年(平成24年)は、18店舗から個性豊かなカレーが提供され、お寿司屋さん、居酒屋さんなどが作るお店のメニューにはない、この日限定のカレーもある。通常のお皿では1食でお腹が膨れるため、小皿に盛りつけ、何種類も食べ比べてもらえるよう提供の仕方にもこだわっている。
18店舗から個性豊かなカレーが提供
3,000食のカレーが瞬く間に完売の大盛況
カレーは1皿300円、4枚綴りチケットを購入すれば200円お得な1,000円で楽しめる。毎年あっと言う間に完売するため、3,000食に増やしたが、やはり今回も瞬く間に完売の大盛況。カレー好きの有名ブロガーが柿木畠振興会の 『カレー博』 を情報発信してくれるおかげで、この日は全国からカレー好きの人が大勢柿木畠に集まってくる。
『柿まつり』 では、柿木太鼓の演奏が楽しめる同時開催の 『柿まつり』 では、柿木太鼓の演奏が楽しめることから、ジャパンテントのホストファミリーを務める柿木畠商店街の常連のお客様から「外国人留学生たちも祭りに参加させて欲しい」と頼まれ、柿木太鼓の演奏を体験してもらったところ、初めての体験に大喜びで、柿木畠の祭りに参加した感激をネットで発信してくれた。
その経験から、これまで商店街の仲間意識を高めることを主目的に開催していた祭りをもっと広い絆づくりに活用できることに気づかされる。
外国人留学生たちが柿木太鼓の演奏を体験
◆新たな気づきが商店街活性化の起爆剤に
「商店街の店主たちが全員参加で一緒に汗を流したことで、それまで会釈する程度だったのが、旧知の友のように仲良くなり、祭りの効能には正直驚きました」と竹内常務は力を込める。
それだけでなく、外国人留学生とのつながりができたことも大きな収穫である。
柿木畠振興会では、金沢で生活している金沢大学をはじめとした各大学の留学生たちに情報発信を手伝ってもらえれば、その情報を見た外国人観光客が柿木畠に食事をしに来てくれ、柿木畠がクローズアップされれば、その相乗効果で外国人だけでなく、県外からの旅行者も柿木畠を訪れてくれることにつながると考えた。
そうした好循環を創出する取り組みをスタートさせるべく、平成24年度の『地域の絆づくり商店街モデル事業』に、〝外国人にもやさしい商店街〟をテーマに柿木畠振興会が名乗りをあげ、昨年12月21日、県庁にて谷本知事より認定証の交付を受ける。
柿木畠振興会では、現在、留学生のネットワークは40人あまりに増えてきているが、今後は大学の先生とのネットワークをより緊密にし、 『水掛け神輿』 や 『柿まつり』 に一人でも多くの留学生に参加してもらうために、各大学の先生から留学生たちに説明してもらえるよう連携していく必要性を感じている。
◆国際色豊かな街に磨きをかける
地元にいる留学生たちにお祭りに参加してもらうだけでなく、柿木畠振興会の会員を集めて、語学の勉強会の講師を務めてもらうなど、さまざまな機会を作り、外国人とコミュニケーションできる土壌づくりにも力を注いでいる。
柿木畠商店街のホームページは、現在日本語と英語に対応しているが、それ以外の中国語、韓国語、台湾語など、将来的には20ヵ国語程度の言語で情報発信できるよう留学生たちに翻訳を手伝ってもらい、ホームページに反映させていく予定だ。
「外国人からメニューに載っている料理や食材について聞かれた時に、すぐに質問に答えられる各店オリジナルの指さしシートの作成など、留学生の協力を得て順次実現していき、外国人にもやさしい商店街にしていきたい」と竹内常務は顔をほころばす。
そうした活動の目的は、言うまでもなく柿木畠というブランドを全国に、そして海外に向けて発信することである。
◆金沢21世紀美術館とのコラボで柿木畠を発信
平成15年、県庁が広坂から駅西に移転したことは柿木畠商店街にとって大きな痛手であったが、その翌年、広坂に金沢21世紀美術館ができたことで、新たな人の流れが生まれ、初代館長の蓑豊氏の声掛けで美術館と連動して様々なイベントを行ってきている。
例えば、21世紀美術館をイメージしたオリジナルランチを各店で提供したり、オリジナルグッズの販売や美術館のポスターの掲示など、互いに相乗効果を生み出す活動を継続してきている。
さらに金沢21世紀美術館入場券の半券を持参すると、各店独自のサービス(1品サービス、5%引きなど)を受けることもできる。今後も金沢21世紀美術館を訪れる多くの観光客に、柿木畠に足を運んでもらえるよう美術館とのコラボレーションならびに情報発信にも力を入れていく。
◆プラス思考で柿木畠の魅力を発信
新木久雄 理事長今後は、スマートフォン向けに商店街の情報発信やイベントの生中継を発信していくことにも取り組んでいく予定である。と同時に、外国人旅行者の間でのみ活用されている口コミサイトにも柿木畠の魅力を発信していくべく準備を進めている。
「日本語版と中国語版の既存のパンフレットに加えて韓国語版と英語版の柿木畠振興会のパンフレットが今春にできあがるため、それを県ならびに金沢市の各施設に置いてもらい、観光客の方に柿木畠を知ってもらう一助にしたい」と竹内常務は力を込める。
こうした様々な努力を積み重ね、柿木畠の各お店のおもてなし力を向上させていくことで、結果として柿木畠振興会のおもてなし力がアップし、ひいては金沢のホスピタリティーがアップすることにつながっていくことを切望している。
竹内公明 常務理事「柿木畠商店街はみんなが本当に仲良く、各お店をみんなで盛り上げてきており、これだけ各店のことをみんなが熟知している商店街は他にはないと思います。それができるのは何と言っても 『水掛け神輿』 で一致団結する間柄だからです」と竹内常務は自らの商店街を誇らしげに語る。
「かつては年長者と若手の間に垣根のようなものがあった時代がありましたが、近年はみんなが心を一つにしてプラス思考で柿木畠を盛り上げることに邁進しており、本当に自慢できる素晴らしい商店街になり、理事長としてこんな嬉しいことはありません」と満面の笑みで語る新木理事長の笑顔が、柿木畠振興会の全てを物語っていると言っても過言ではない。
◆インタビューを終えて・・・
『水掛け神輿』という祭りに1日参加しただけで、全ての商店主が旧知の仲のように親しくなり、みんなでみんなの店を応援する、実に気持ちのいい心意気あふれる商店街になり、商店主が自分たちの街・柿木畠に誇りを持っている。日本に昔から伝わる祭りの効能を目の当たりにさせられた思いだ。